49. シャトルバス

まえがき
いよいよ三人は多国籍犯罪企業WSSPの末端で動く西川真と面談します。
ストーリー
六甲大橋を人工島の六甲アイランドCITY(愛称RIC(リック)あるいは六甲アイ)に向けて、一台の4ドアクロスオーバーSUVが渡っています。鮮やかなレッドの流線形ボディーのその車はスムーズで流れるような走りをしています。
「本当スッゲェ。見て下さいよ。方向指示器を操作するだけで、自動でレーンチェンジするんですよ。それに、このアクセルの反応の良さ!」と、右ハンドルを握る金田はうれしくて仕方がないようです。
ブラックのオールレザーの助手席に座る坂元は、フロントパネルに取り付けられた大きな15インチのタッチスクリーンに見入っています。そこには、リアルタイムで表示されるマップはもちろん、エネルギー消費量やメディアの操作ボタンも表示されています。
「本当に静かで安定した走りですね。1回充電したら何キロ位走るんでしょうか。」と、坂元は後部座席を振り返り、真ん中の座席で黒の中折れハットを被り腕を組んでいつも通りムスッとした顔をしている深田理事に聞きます。
「フル充電で約600km走ると言われておる。4WDの前後デュアルモーターで、3.7秒で時速100km/hに到達する加速をするそうじゃ。べレットがオーバーホール中じゃから、金田が好きそうな車で来たんじゃ。」と、深田理事はあいかわらずニコリともせずに答えます。
「二人にはこれから頑張ってもらわんといかんからな。」
T字をかたどったエンブレムを付け、ガラスルーフで室内が明るく広く感じるレッドカラーのテスラ・モデルYは颯爽と六甲アイランドに上陸しました。
アイランドセンター前の大型複合ビル「神戸ファッションマート」の駐車場にテスラを止め、三人は都市再開発コンサルタント事務所「神戸再開発ファーム合同会社」で代表の江川繁に会議室に通されました。
「こちらが、有馬地区で会員制ショッピングモール事業を進めておられます西川アセットコンサルタントの西川社長です。」と、江川繁が三人に紹介します。
バーズアイ柄のボタンが2つ付いたネイビー色スーツとホワイトのボタンダウンシャツ、グレーのレジメンタルタイを締めた、細身でしなやかな体つきのビジネスマンが立ち上がりました。オールバックの黒髪と日焼けした爽やかな笑顔を見せた男は、どうみても40歳位の若々しさがあります。
「西川社長、こちらはザ・オーバーヘッドホテルズ日本法人 坂元社長、日本ホラリス投資法人 金田執行役員と、事業用地を仲介されました不動産会社 深田社長です。」
「不動産コンサルタント西川真です。」と、差し出す名刺の出し方を見ても、立派なビジネスマンで悪い印象がありません。深田理事はじっと目の前の男を観察していました。人を見る目は確かであると自負しています。
会議テーブルに向き合って座った1人と3人に、江川は事前に知らせていたお互いの事業計画の詳細をさらに説明し、西川真が運行を予定しているシャトルバスルートに宝塚すみれゴルフ倶楽部跡地のセブン・フラッグステーマパークを入れることを提案しました。
「このシャトルバスはJR・阪急宝塚駅前ロータリーを出発し、手塚治虫記念館、宝塚大歌劇場、宝塚ホテルを経て、セブン・フラッグステーマパークに行き、その後有馬温泉地へ向かうことになります。片道約40分です。豪華バスを導入し、運行は阪急バスに依頼する計画にしています。これにより双方の集客に役立ちます。」
じっと聞いていた深田理事が、
「テーマパークにはオフィシャルホテルとして日本初のザ・オーバーヘッドホテルズが開業するが、温泉地の旅館と宿泊客の奪い合いにならんか、じゃな。どうですか、坂元社長」と振りました。
「私どものホテルは本社スイスの方式を導入致します。ジェットコースターがメインのセブンフラッグス・テーマパークの来場者は、独身の若者のグループと若い家族連れが中心と考えておりまして、ゴージャスなロビーとお子様が喜ぶキャラクター装飾も加えたお部屋になります。」
「また浴室もシャワー中心、中年層以上の希望の高い大浴場も設けません。それ故、温泉を望む方には有馬温泉へと誘導することで客層が被らないでしょう。」と、坂元八造は予定していた返答をいたします。
「広大な駐車スペースを設けますので、自家用車を駐車したまま、シャトルバスで温泉地との移動に利用されれば、帰りはまたテーマパークとホテルにお戻りいただけますので。」と、金田俊哉も執行役員らしい物言いで追加しました。
「有馬地域での会員制ショッピングモールは、生活に余裕がある層を中心に考えており、都心の百貨店以上の品質の商品をゆっくりとお選びいただけるようにします。18歳未満の入場を認めない大人の社交場にいたします。」
「そのため、同地域内には屋内型のキッズからハイティーンまでを対象とした職業実体験施設チッサニアを設けます。有馬温泉の宿泊客のお子様には一日入場券を発行いたします。貴ホテルの宿泊客のお子様にも一日入場券を発行いたしますので、ぜひ入場頂きたいですね。」と、西川真もシャトルバスルートの利用の利点を述べました。
解説
犯罪収益移転防止法
マネー・ローンダリング対策やテロ資金供与対策は、一国だけで行うものではなく、その規制は国際的な協調が不可欠のものであり、FATF(Financial Action Task Force on Money Laundering 金融活動作業部会)は金融機関等への顧客の本人確認とテロ関係等の疑わしい取引の届出を義務化する等を提言しました。
これを受けて日本においても、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年3月31日成立、最終改正令和6年4月1日施行)いわゆる犯罪収益移転防止法が成立しました。
この法律は、犯罪による収益(組織的犯罪収益等又は薬物収益犯罪等)が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えるものであること、及び犯罪による収益の移転が、没収、追徴その他の手続によりこれをはく奪し、又は犯罪による被害の回復に充てることを困難にするものであるとしています。
そして、犯罪による収益の移転を防止することが極めて重要であることに鑑み、特定事業者による顧客等の本人特定事項等の確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法による措置と相まって、犯罪による収益の移転防止を図り、併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的としています。
特定事業者
・金融機関等
・保険会社
・信託会社
・電子決済等取扱業者
・ファイナンスリース事業者
・クレジットカード事業者
・カジノ事業者
・宅地建物取引業者
・宝石・貴金属等取扱事業者(古物商含む)
・郵便物受取サービス業者(いわゆる私設私書箱)
・電話受付代行業者(いわゆる電話秘書)
・電話転送サービス事業者
・司法書士又は司法書士法人
・行政書士又は行政書士法人
・公認会計士又は監査法人
・税理士又は税理士法人
・弁護士又は弁護士法人
特定事業者の義務
・取引時確認
・確認記録の作成・保存(7年間)
・取引記録等の作成・保存(7年間)
・疑わしい取引の届出(弁護士、司法書士を除く)
・コルレス契約等締結時の厳格な確認
・外国為替取引並びに電子決済手段及び暗号資産の移転等に係る通知
・取引時確認等を的確に行うための措置
取引時確認事項は、本人特定事項、取引を行う目的、職業(自然人)又は事業の内容(法人・人格のない社団又は財団)、実質的支配者(法人)、資産及び収益の状況(ハイリスク取引の一部)になります。
なお、弁護士以外の士業者の確認事項は本人特定事業と取引目的等(取引を行う目的、職業/事業の内容、実質的支配者)とされています。
特に行政書士・公認会計士・税理士については、守秘義務に係る事項を除き、疑わしい取引の届出を行わなければなりません。また、ハイリスク取引においては、疑わしい取引の届出を行うべきか否かの判断のために、資産及び収入の状況の確認を行わなければなりません。
弁護士については日本弁護士連合会の会則の定めるところによります。
疑わしい取引の届出を受けた所管行政庁は、国家公安委員会・警察庁(FIU)に通知し、その情報が各都道府県警察に提供されて、疑わしい顧客(犯罪組織)の検挙につなげるのです。
参照:「犯罪収益移転防止法の概要」(令和6年4月1日時点)JAFIC:警察庁刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策第一課 犯罪収益移転防止対策室サイト
参照:「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策(マネロン等対策)」財務省サイト








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