53. 国際密輸ルート

2024年9月3日

まえがき

 榊理事長は伊勢信一郎の提出した調査報告書を読みます。

ストーリー

カラコルム・ハイウエイ

 多国籍犯罪企業WSSPは、世界各国に現地法人を設立してローンダリング(洗浄)したマネーを国土と水源の買収に注ぎ込み、かつCNT(カーボンナノチューブ)を買い集めていることは、日本政府と公益財団法人みやこ財団の国土防衛会議でも報告されており、榊理事長やファミリーオフィス銀座所長伊勢信一郎も把握していました。

 しかし、多国籍犯罪企業WSSPはそれ以外にも多くの分野に密かひそかに出資をし、とりわけ物流設備・経路へも膨大な資金を投資してきたのです。そして、今や世界中の航空・海運・鉄道・トラック輸送に大きな力を持っているのです。

 そして日本に設立した一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)も、世界的証券・投資銀行フレディ・スミスを通じてWSSPから豊富な資金を供給され、大手商社宅安たくあん物産にCNT(カーボンナノチューブ)を調達させています。

 不動産コンサルタント西川しんに日本名勝保護協会(JSSP)の正体を知らせずに紹介したのも、宅安たくあん物産の役員だったのです。

 フレディ・スミスも宅安たくあん物産も特定事業者としてWSSP及び日本名勝保護協会(JSSP)がブラックであると認識していましたが、「知らない」ことで通しています。当局への通報(「疑わしい取引」の届出)よりも「優良顧客」を維持することを選んでいるのです。

 日本名勝保護協会(JSSP)が調達したCNT(カーボンナノチューブ)は、宅安たくあん物産の手配するルートで国外に経済産業大臣の許可なく持ち出されています。

 先ず、トラック輸送業者で下関港あるいは新潟港に運ばれ、経営権を握る海運会社の貨物フェリーで偽装されてホワイト国(グループA)の大韓民国・釜山ぷさん港に届けられます。そして同国のWSSP現地法人の手でさらに偽装されて、中国・連雲港れんうんこう青島ちんたお天津新港てんしんしんこうに、あるいはミャンマー(旧ビルマ)のティラワ港に行くのです。

 中国港ルートでは、中央アジア圏へ最短日数で運送することができる「チャイナ・ランドブリッジ(CLB)」と呼ばれる鉄道網で中国西部最大都市の新疆しんきょうウイグル自治区首府ウルムチ市を経由して、カシュガル地区へ運ばれて行きます。

 また、ミャンマールートでは、ティラワ経済特区(SEZ)の物流倉庫に一旦運ばれた後、再びパキスタン・グワーダル港に海上輸送され、「カラコルム・ハイウェイ」を陸送されて国境を越え、中国・新疆しんきょうウイグル自治区カシュガル地区へと運ばれているのです。

 手間と費用と時間のかかる複雑なルートで偽装を施して、CNT(カーボンナノチューブ)はカシュガルへと向かっているのです。

 そして、そこは新幹線の中で坂元八造と金田俊哉が見た車内電光掲示板のニュースの地域であり、武装勢力が占拠し独立国家を宣言した地域なのです。

 伊勢信一郎はこの複雑な国際密輸ルートを調べた報告書を榊理事長に提出しました。

 また、伊勢独自のルートで取得した情報では、中国がこの東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の急進派である武装勢力に対して強固な軍事行動を取らないことに対して、当初は武装勢力が核兵器か細菌兵器を保有している疑いを抱いていましたが、そうではなく、今回の独立宣言は多国籍犯罪企業WSSPの意向が大きく働いており、中国上層部との何らかの取引があるらしいことも報告書に付記したのです。

 「つまり、カシュガルにCNT(カーボンナノチューブ)を集積し、何かが行われようとしているということじゃな。」と、公益財団法人みやこ財団の最上階5階の理事長室で、デスクに座った榊理事長は報告書をめくり、目の前のアームチェアに座る伊勢信一郎に問いました。

 「その通りですが、それが何かは掴めておりません。弾道ミサイルの部品など、大量破壊兵器に加工するにしても大規模な工場設備が必要でしょう。アメリカの軍事衛星ならその建設が見つけられるのではないでしょうか。」と、伊勢信一郎はアメリカの軍レベルの協力が必要と答えます。

 「しかし、よく調べてあるわい。」と、榊理事長は心の中で呟きました。目の前で紳士然と座っているダンディーな男を世界中苦労して探し出して良かったと改めて思うのでした。

 「最新軍事衛星のKH-13か。」と、榊理事長は読み終えた報告書を机の上にポンと投げました。

 「それは官房長官に依頼しておく。また、こちらの用意した世界初の有機薄膜ぺロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)を使ったノンシリコン・ソーラー・パネル(有機薄膜太陽電池)の餌にもじき食いつくじゃろう。そちらは頼むぞ。」

 「はい、お任せ下さい。」と返事をして、伊勢信一郎は優雅に立ち上がりました。

解説

チャイナ・ランドブリッジ(CLB)

 日本の武器や軍事転用可能な貨物・技術が、日本及び国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っています。

  この安全保障の観点に立った貿易管理の取組を、日本では外国為替及び外国貿易法に基づき実施していますが、これは「34. 国土防衛会議」の解説でご説明しておりますのでご覧下さい。

 日本名勝保護協会は、日本政府の安全保障貿易管理のリスト規制品目にかからないようにCNT(カーボンナノチューブ)を偽装し、キャッチオール規制についても、経済産業大臣の許可が不要な「輸出貿易管理令の別表第3」であるグループA(旧ホワイト国)の27ヶ国の内の国に一旦輸出しています。このホワイト国には大韓民国も含まれています。そして、韓国を中継点として目的地のカシュガル地区に向かわせているのです。

 さて、ここでは、「チャイナ・ランドブリッジ(China Land Bridge)」について解説いたしましょう。これは中国港から中国国内を横断して最西部の阿拉山口駅あらさんこうえきから国境を越え、カザフスタン・ドスティークから中央アジア圏を結ぶ貨物鉄道網のことをいいます。

 これは習近平国家主席の経済構想「一帯一路」の中の一部であり、「新シルクロード」に含まれてもいます。

 この中国大陸横断鉄道の価値は、航路より早く、航空路より安く運送できることなのです。

 さらに、2011年には重慶から「渝新欧ゆしんおう」と呼ばれる貨物列車はドイツ・デュイスブルクまでの約11,000キロメートルを16日間で結ぶ新たなシルクロード(欧州~中国間)になっています。

 多国籍犯罪企業WSSPは、極東アジア地域からは中国港からカシュガル地区へ鉄道でCNT(カーボンナノチューブ)を西へ運ばせ、ヨーロッパからはカシュガル地区へ向けてCNTを東へ運ばせようとしているのです。