55. 新型太陽電池
まえがき
伊勢信一郎は敵の欲する情報をわざと流します。
ストーリー

伊勢信一郎は、ザ・オーバーヘッドホテルズのスイス本社を通じて、世界的証券・投資銀行フレディ・スミスに次のような情報を流しました。
それは、日本でのセブンフラッグス・テーマパーク事業計画と、その敷地150haの40%である60haに設置されるメガソーラーシステムには、エネルギー変換効率が格段によくなった世界初のノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)が使われるというものです。
この情報はフレディ・スミスからすぐに一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)に報告され、総合商社宅安物産に同太陽電池の調達指示が出されました。
宅安物産役員宅安漬雄はもう話すことはないと思っていた、株式会社西川アセットコンサルタント社長西川真に電話をせざるを得なくなったことに腹を立てていました。
なぜなら、日本名勝保護協会(JSSP)から、西川がザ・オーバーヘッドホテルズ日本法人の代表取締役社長坂元八造と共同出資の交渉をしており、面識があることが知らされたからなのです。
西川真は、宅安漬雄に日本名勝保護協会(JSSP)の「疑わしい取引」を行政庁に届出すると電話で告げましたが、宅安漬雄からこちらで調査して返事を寄越す言われ、2週間だけ届出を待つことにしていました。
しかし電話を切って数日後には宅安物産の顧問法律事務所から一方的な投資一任契約解除通知が確定日付のある内容証明郵便で届き、財務部長が真っ青な顔で社長室に飛び込んで来ていました。
これが宅安役員の返事なのだと、西川は受け止めました。株式会社西川アセットコンサルタントは売上の3割以上を失うことになるので、屋台骨を揺るがす大事態です。それ故、西川にとっても宅安漬雄から電話がかかってきたのは意外でした。
「やあ、西川君、元気にしているかね。」と、上機嫌な声の宅安漬雄。
「おかげさまで、順調です。」と、やんわりと皮肉る西川真。
「もう、ご返事はいただいたので、お電話があるとは思いませんでしたが。」
「西川君、私は君という人間を買っているのだよ。これは我々の信頼関係をさらに強くするための良い機会だと、私は考えているのだがね。」
「先日の君の疑念の件、私が確認したが、やはり日本名勝保護協会には何の問題もなかった。だから、届出の必要はないよ。」
「お電話の用件はその事でございますか。」と、怪訝そうな西川。
「いや、届け出る、届け出ないはあくまで君の判断であるから、私から何も言うことはない。しかし、一つ助言しておくと、君がこれから事業家として大きくなろうと思っているなら、ある程度「清濁併せ呑む」度量の大きさも必要ということも知っておくべきだね。」
「アドバイスありがとうございます。」と、そんなことできるかと思いながら大人の対応をする西川。
「今日、電話したのは別の用件なんだよ。いま我が社では新型ソーラーシステムの導入先開拓に力を入れていてね。君が有馬地区の事業で共同出資を交渉している近隣のゴルフ場跡地のテーマパークでは、メガ・ソーラーシステムを設置する計画だそうじゃないか。」と、本題を切り出す宅安漬雄。
「どうだろう。ザ・オーバーヘッドホテルズ日本法人の社長坂元氏とアポイントを取りたいのだが、私からいきなり電話するより、君から坂元社長に一言伝えておいてくれないだろうか。」
「それは、私が紹介するということですか。」
「いや、ただ私から連絡があることだけを伝えてくれれば良い。我が社の新型ソーラーシステムをご紹介し、ご検討いただきたいのだ。」と宅安漬雄。
「そうすれば、先日の投資一任契約解除通知は破棄して、今後とも我が社の資産運用を君に一任させていただくよ。」
これは西川にとって大きな話でした。宅安物産に契約解除された場合、会社は1年ももたないと財務部長に泣きつかれていたからです。西川は有馬地区の事業を継続させるには、日本名勝保護協会(JSSP)に代わる新たな大口出資者を見つけなければいけませんが、その時間が欲しいのです。
「疑わしい届出の件と、このソーラーシステムの件は分けて考えて良いということですね。」と、西川は念を入れます。
「そう言ってるだろう。二言はない。」と宅安漬雄。
「では、次回坂元社長と面談します際に、切り出しましょう。」
「おお、そうしてくれるか。」と、うまくいったと上機嫌な宅安漬雄でした。
受話器を置いた西川はすぐにパソコンに向かい、日本名勝保護協会の「疑わしい取引」の届出ファイルを作成し、電子政府の総合窓口e-GOV(イーガブ)から金融庁に電子申請しました。
もちろん、宅安物産も、総合商社というものはかなりグレーな部分があるのですが、今回の取引では紹介をしただけなので届出の対象にはならないと西川は判断したのでした。
解説
電子政府
金融庁は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)第8条の規定に基づき、金融庁長官に疑わしい取引の届出をすることとされている金融機関等の具体的な手続きと届出にあたって、電子申請システムを利用した届出を積極的に推進しています。(令和6年4月1日より届出様式が変更されました。)
電子申請システムによる届出の場合は、電子政府の総合窓口 e-Gov (イーガブ)電子申請から申請することになります。e-Gov では、自宅や職場のパソコンから行政機関に対する申請・届出等の手続ができます。
そのメリットは、
1.役所の窓口が閉まっていても大丈夫
24時間、夜間、休日でも申請が可能です。
2.どこからでも申請可能
自宅や職場、遠隔地からでも、インターネット経由で申請が可能です。
3.マイページで状況をすぐに確認
自身のマイページ上に一覧で管理され、処理状況や提出先機関からの通知等を確認できます。
4.パソコン上だけで手続きが完了
自身のパソコンで申請・届出から電子納付、公文書の取得までを一貫して行えます。
現在のところ、電子申請できる行政手続数としては、厚生労働省の手続きが全体の91%を占め、次に国土交通省、経済産業省と続きます。
なお、国税庁の税務申告については、e-Tax (イータックス)から申請可能です。
参照:「疑わしい取引の届出等」金融庁サイト








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