59. 決着
まえがき
伊勢信一郎のわなに敵がかかり、不法輸出の現場が差し押さえられます。
ストーリー

「宝塚~有馬地区シャトルバス運行事業計画」の共同出資についての二回目の協議で伊勢信一郎と西川真が固い握手を交わしてほどなく、ザ・オーバーヘッドホテルズ日本法人に総合商社宅安物産役員宅安漬雄から電話があり、坂元社長に取り次がれました。
宅安漬雄は日本名勝保護協会(JSSP)の指令により、宝塚市すみれゴルフ倶楽部跡地のセブン・フラッグステーマパークの敷地の40%を占める駐車場屋根に設置される、エネルギー変換効率が格段に良い世界初のノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)のサンプルを何としても手に入れなければなりませんでした。
そのため架空の新型ソーラーシステムの導入を坂元社長に持ちかけて、商品比較名目でサンプルを手に入れようと画策したのです。
予想通り、電話に出た坂元社長は、新発明ソーラーシステムの導入は決定しており、宅安物産の扱うソーラーシステムは導入できないと返事しました。そこで、その世界初のノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)と自社商品を比較したいのでサンプルを提供していただけないかと持ちかけますが、もちろん断られました。これも宅安漬雄の想定内の返事でした。
「坂元社長、そのノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)はいったいどれ位の性能があるのかを拝見させて頂けないでしょうか。今後の参考のためにぜひお願いします。」と、宅安漬雄は懇願しました。
「そうですねえ。これは未発表なのですが、実は新発明ソーラーの生産は、技術提供を受けて大量生産できる能力があるソーレ(’SORAY’)が受注いたしました。そこで、琵琶湖畔のソーレCFRP先端技術研究所でソーラーの性能試験を実施することになりました。それで良ければ同席なさいますか。但し、写真や配布資料の持ち帰り等は一切禁止ですが。」と、坂元八造は計画通りに罠をしかけます。
「ありがとうございます。ぜひ出席させていただきます。」と宅安漬雄は答え、しめたとほくそ笑みました。なぜなら、ソーレならば社長の月忘平雄に依頼すればサンプルの一つや二つ手に入れるのは造作もないと思ったからです。
「また新地のクラブ白紙に連れていってやるか。あいつの好みの百合絵を横に座らせれば、もう手に入れたも同然だ。」と、宅安漬雄はこれまで何十回も接待して骨抜きにしてきたのもこんなときのためだった、役に立ったと思いました。
新地とは、東の銀座に匹敵する西の大阪北新地のことです。JR大阪駅の南側には集合オフィスビルの大阪駅前第一ビルから第四ビルまでが建っていますが、さらに南に国道2号線を渡った一帯、東西を御堂筋と四つ橋筋に挟まれ、南は堂島川までの辺りです。二つの筋につながる東西方向の細い通りは、永楽町通り、新地本通り、堂島上通り、堂島船大工通り、堂島浜通りなどと通りに名称が付けられており、高級飲食店が建ち並んでいるのです。
琵琶湖畔のソーレCFRP先端技術研究所は、西川真が不動産コンサルタントとして敷地選定から建築企画までコンサルティングして建てられたものです。そこで、ザ・オーバーヘッドホテルズ日本法人 坂元社長、日本ホラリス投資法人 金田執行役員、ソーレ株式会社 月忘社長、そして総合商社宅安物産役員 宅安漬雄が立ち会って世界初のノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)の発電量の実験が行われました。
結果、新型ソーラーは高度のエネルギー変換効率を示し、従来品の2倍以上の発電量をマークしたのです。これにより、セブン・フラッグステーマパークとザ・オーバーヘッドホテルズ宝塚の消費発電量をほぼまかなえる性能が証明されました。
その夜、北新地のクラブ白紙では、宅安漬雄が百合絵を隣にはべらせ目尻が下がった月忘社長に、世界初のノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)のサンプルを通常の買付品の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の出荷に紛れ込ませるように依頼しました。月忘社長は鼻の下をのばしたまま伊勢信一郎との打ち合わせ通り、それを承諾したのです。この時のやりとりは伊勢信一郎の依頼で月忘社長がICレコーダーに録音しておりました。
また、伊勢信一郎の作戦により、そのサンプルの有機薄膜基盤には分からないように位置発信回路が印刷され、また回路基盤に特殊な光を当てることで赤く発光するようにも細工が施されたのです。
ソーレが生産したPAN系炭素繊維ソレカ®及び炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、総合商社宅安物産の指定運送会社が出荷・搬送して国内の自動車部品メーカーに納品されました。この運送会社も自動車部品メーカーも多国籍犯罪企業WSSPの資金によるファンドで出資と取締役が送りこまれ、経営を掌握されている会社です。
こうして自動車部品に偽装され、下関港に陸送され、韓国に輸出されようとしていたところを、サンプルの有機薄膜基盤の位置発信回路の発する信号でコンテナ群が特定され、出港直前に福岡県警により差し押さえられ、特殊光に赤く発光するノンシリコン有機薄膜ペロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)のサンプルも発見されたのです。
警視庁公安部は「外国為替・外国貿易法」違反で、強制捜査に踏み切りました。海運会社、自動車部品メーカー、運送会社さらには総合商社宅安物産にも捜査は及びましたが、一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)にまでたどり着く証拠を見つけることはできませんでした。
また、海運会社、自動車部品メーカー、運送会社は営業停止処分の行政罰と担当者の懲役又は罰金等の刑事罰を科せられましたが、総合商社宅安物産は単に手配をしていただけとして不起訴処分となりました。
総合商社宅安物産は、マスコミ発表で一連の取引手配は宅安漬雄役員の一存でしたことであり、不法輸出と認識していなかったが確認不足であったことの責任をとらせて取締役を解任したことを伝えました。
しかし、これで処分は終わりであり、宅安漬雄は関連会社の社長にスライドしたのみで終わりました。
なお、録音内容については伊勢信一郎は公にしませんでした。単にサンプルがほしいから月忘社長に頼んだだけで、自動車部品メーカーに運ばれたのは手違いであり、不法輸出するつもりはなかったと宅安漬雄に言い逃れられるかもしれず、公にした場合は月忘社長の責任も問われるだろうからと伊勢は判断したのでした。
ソーレ(’SORAY’)は月忘社長が自主的に代表職から退き、取締役となったこと、代表取締役社長には創業家筆頭角山同心の協力者である取締役が飛び級で就任することが発表されました。
ファミリーオフィス銀座と公益財団法人みやこ財団の尽力にもかかわらず、今回も多国籍犯罪企業WSSPとその日本法人である一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)を撲滅することはできませんでしたが、六甲山系の国土と水源を守り、核弾頭ミサイルにも使われかねない炭素素材の不法輸出ルートを潰せたことは大きな一歩と言えるのでした。
解説
不法輸出罰則
当サイト「34. 国土防衛会議」では、国際輸出管理レジームを解説しましたが、ここでは罰則についてお話しましょう。
「外国為替及び外国貿易法」では、経済産業大臣の許可を得ずに不法輸出した場合等の罰則としてこのように定めています。(同法第69条の6、第25条第1,2項)
1.無許可の技術取引、仲介取引、貨物輸出の場合
7年以下の懲役又は2,000万円(若しくは価格の5倍)以下の罰金、若しくはその併科
2.無許可の核兵器等の関連技術取引、関連貨物仲介取引、関連貨物輸出の場合
10年以下の懲役又は3,000万円(若しくは価格の5倍)以下の罰金、若しくはその併科
なお、この貨物の輸出に係る部分の未遂罪についても罰するとしています。
また、経済産業大臣は行政罰として、3年以内の技術提供・仲介取引・一切の輸出の禁止処分を課すことができるとしています。








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