20. そして神戸へ
まえがき
坂元八造と金田俊哉は不動産業者の深田金司の傍らで神戸市役所での不動産調査を学びます。
ストーリー

宝塚ホテルを出発してJR三ノ宮駅に来るまでに何台の後続車に道を譲ってきたことでしょう。運転する金田俊哉は一生分道を譲った気分ですが、初期型いすゞべレット1500は奇跡的に故障することなくJR三ノ宮駅の高架線路の下をくぐり、片側4車線の大通りフラワーロードを南へ300mほど行くと、周囲の建物に比べて一際高い地上30階建の神戸市役所本庁が見えてきました。
「あの高い建物が神戸市役所ですか。」と坂元八造が後ろを振り返って金田金司に尋ねます。
「そうじゃが、我々の目的地は次の「神戸市役所南」の交差点を左折して磯部通に入ってしばらく行ったところじゃ。」と、まだうつむいて目をつむったままの深田金司がしわがれた声で答えます。
そして目的地の都市局都市計画課のある三宮国際ビルに到達した時には午後4時30分になろうとしていました。
「早うせんか。閉まっちまうぞ。」と、駐車場で深田金司が二人をせかします。
「ちょっと待ってくださいよ。」と、情けない声を出す金田俊哉。慣れない車のクラッチ操作を続けたことで左足がつりそうで、坂元八造に腕を支えてもらってヨタヨタと深田金司を追いかけます。
「じいさんのくせに足が速いんだから」と不満げな金田俊哉の足のつりもようやくおさまって来ました。
三人は、神戸国際ビル6階の神戸市都市局都市計画課窓口に来ました。都市計画の決定事項等や制限の有無を図面で確認し、深田金司は職員に声をかけて現在有馬町で新たな開発申請や事前協議がされていないかどうか、開発道路の相談等もなかったかを確認し、通常の規制以外に有馬地区景観形成市民協定についてもいくつか質問をしました。そして「神戸市開発指導要綱」をもらった時にはすでに5時になっていました。
「ホンマなら神戸地方法務局北出張所で登記記録や地図等を取得してからこちらへまわるんやが、今回は具体的な物件を決めての調査やないさかい、有馬町の用途地域等と開発計画の確認をしておくに留めて置く。」と言うと、深田金司はさっさと階段を下りて行きます。坂元八造と金田俊哉は慌てて追いかけます。
「明日、もう二~三箇所調べたいところがあるが午前中は用事があるさかい、JR三ノ宮駅の東口のロータリーに13時に来てや。今日はこれで解散や。」と、ロビーで「神戸市開発指導要綱」を坂元八造に手渡して、深田金司はとっとと駐車場へと歩いていきました。
「ええ、ここで解散か。宿泊は有馬温泉に予約が入れてあるんだったよな。」と、疲れ切った様子の坂元八造はロビーのベンチに座って動けない様子です。足のつりがおさまった金田俊哉もさすがにぐったりしています。
「新開地に出て、神戸電鉄に乗り換えて有馬温泉駅に行くか、いっそここからタクシーで行くかですね。5,000円で足りるかなあ。」と、行き方をスマートフォンで調べていた金田俊哉が返します。
「いや、タクシーはだめだよ。電車で行こう。伊勢所長は三宮方面から有馬へ行く公共交通機関の行程を体感することも研修と考えられてる、と思うよ。」と、疲れた顔に引きつった笑みを浮かべて金田俊哉に言い、二人はようやく立ち上がりました。今夜は有馬温泉の金泉と銀泉が二人の疲れを癒やしてくれることでしょう。
解説
神戸の中心地
神戸市の中心的に栄えている場所は三宮です。JR西日本にはJR新神戸駅という東海道新幹線停車駅がありますが、立地は三宮よりも山側になります。この駅には直結しているANAクラウンプラザホテルがあります。このホテルは地上37階、高さ158mもありそびえ立っている印象を受けます。ホテルから北野通りを徒歩で西へ、北野異人館街には近いです。ただ繁華街には神戸市営地下鉄で一駅の三宮まで出ることが多いですので、JR新神戸駅が神戸の中心となる駅とは言えないです。
またJR神戸駅も別にありますが、こちらはJR三ノ宮の西に二駅目であり、山側(北側と神戸人は思っていますが実は西側)は新開地、海側(南側と神戸人は思っていますが実は東側)はハーバーランドがあります。しかしこちらも神戸の中心となる駅ではないですね。
したがってJR三ノ宮駅とそのすぐ北側の阪急神戸三宮駅の周辺エリアが神戸の中心として栄えています。読みは「さんのみや」で神戸の地名では三宮町ですが、JRは分かりやすく三ノ宮とノの字を入れています。
この三宮ですが、生田神社を中心に一宮神社から八宮神社まで8神社があり、神戸八社巡りで厄払い、願掛けをしご朱印を集めるのも人気です。
不動産の物件調査の手順
不動産の物件調査の手順を確認すると、先ず不動産業者から入手した「物件概要書」と住宅地図を準備しますが、住宅地図の個々の住宅に記載されている居住者は必ずしも所有者ではないため、できれば所有者を不動産業者から聞いておくと後が楽です。なお、所有者イコール売主とも限りませんので注意が必要です。
登記の調査
法務局では、対象物件の土地、建物の登記記録の証明である「登記事項証明書」、隣接地と前面道路の「登記事項要約書」で確認しましょう。「登記事項要約書」は権利関係をこれで確認はできますが、証明書にはなり得ませんので注意が必要です。なお、法務局ではオンライン交付請求ができ、法務局窓口で発行してもらうより安価で入手できます。
「登記事項証明書」の内容は、「表題部」、「甲区」、「乙区」に分けられて記載されています。
- 「表題部」
表題部はその不動産の表示登記がされます。土地では、所在、地番、地目、地積などです。建物の場合は、家屋番号、種類、構造、床面積などが記載されます。なお、マンションなどの区分所有建物の場合、様式が異なります。
- 「甲区」
甲区は所有権に関する事項が記録されます。
- 「乙区」
乙区は所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
- 注意する登記
注意する登記は、「甲区」では、所有権の仮登記、買戻権、差押え、仮差押え、仮処分などがあります。「乙区」では、抵当権、根抵当権、地役権、地上権などに注意しましょう。
次に、前面道路の登記事項要約書では、所有者と地目を確認しましょう。地目は公衆用道路の他に、私道の場合では宅地になっていたり雑種地になっている場合もあります。
図面では、土地の所在・地番と建物の所在・家屋番号で調べて入手しましょう。公図、地積測量図、建物図面、土地所在図などです。
現地調査
これまで取得した住宅地図や登記記録関係の書類を元に、現状との差異も確認しましょう。土地の調査する点では、境界点(境界標)があるか、地積は公簿と現状で差異があるか、形状・間口・奥行は地積測量図が正しいか、道路との高低差はどれほどか、地勢・地盤・土壌汚染などはどうか、方位はどうか、登記された建物以外の工作物はないかなどです。建物では、増改築されていないか、隣地への越境はないかなどです。
なお、角地では角切りがされているか、間口は2m以上あるか、前面道路の幅員は4m以上あるかどうかなども重要です。資料と現地を照らし合わせて確認しましょう。
法令・道路・供給処理施設の調査
所在地を管轄する役所の都市計画課、開発課、建築指導課、道路課、上下水道課(局)などで調査が必要です。都市ガスの場合は、ガス会社のホームページで前面道路のガス管埋設状況が確認できる場合もあります。
神戸市役所のように専用サイト「神戸市情報マップ」を設けて用途地域等の各種規制を閲覧・印刷できるサービス提供する自治体も増えてきていますが、まだまだ基本は窓口で住宅地図で場所を示しながら確認することになります。用途地域等の規制の内容、開発登録簿、建築概要書(建築確認の記録)、道路の種類、上下水道の前面道路の埋設・引込み状況などの確認です。
なお、固定資産税額等を確認するのに、固定資産公課(評価)証明書がありますが、これは本人か代理人、媒介業者しか取得できませんので、不動産業者に提供してもらいましょう。
追加調査
上記三つの調査は、仲介業者に紹介を受けている場合、契約前に重要事項説明書にまとめて宅建士の説明を受けられますが、検討段階の物件では重要事項説明書がまだ作成されていない場合も多く、また契約前提でないと提供してくれない場合も多いですので、自分で分かる範囲は追加調査してみても良いと思います。








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