9. 暖めていた計画
まえがき
元保健教諭の坂元一美さんは行動に移します。
ストーリー

ファミリーオフィス銀座に就職が決まって、それまで暗い顔でパジャマのまま一日中テレビを見ていた坂元八造の顔に活気が戻り、毎朝遅れてはいけないと始発で出勤するようになりました。そして奥さんの一美さんはようやく暖めていた計画を実行することにしたのです。
「八造さん、わたし今日は北千住まで行ってくるわね。」と、早朝に玄関で伝えます。
「なんだ、買い物か?」と、ネクタイを慌てて締めながら八造が聞きます。
「うん、そんなところ。」と含みをもたせた笑みを浮かべますが、もともと鈍い八造が気づくわけがありません。
一美さんは主人を見送った後、久しぶりにお気に入りのワンピースに着替えてお化粧をして鏡の中の自分をじっと見つめました。中学校に赴任した頃は美人の保健教諭と父兄の話題になりましたが、優しい性格で男子生徒のみならず女子生徒もお姉さんのように慕ってよく保健室に来ました。卒業生は父になり母になって同窓会で会うととても慕ってくれた当時を思い返します。一美さんは今でも年齢よりは10歳ほど若く見られますが、鏡の中の自分はやっぱり年相応ねと思いました。
さて、一美さんはJR常磐線「北千住」駅のLUMINEに来ました。買い物が目的ではなく相談にきたのです。
実は住宅情報サイトに物件を掲載している不動産会社が、無料のファイナンシャルプランナー相談会をLUMINEでするというのでメールで予約していたのです。定年退職後に時間ができた一美さんは、夢の二世帯住宅を建てるべく色々と調べてきました。当初から山手線の内側はとても無理とは思っていたのですが、その周辺の地域でも予定していた予算ではかなり厳しいということがわかり、資金相談のためファイナンシャルプランナーにアドバイスをしてもらおうと考えたのです。
空き店舗を期間中だけ借りた相談会場には「住宅相談会実施中」ののぼりが何本も立てられています。仮設のカウンターが4つのブースに仕切られていますが、一番奥のブースに「FP池田」と書かれた札が掛けてありました。一美さんはそのブースに座っている女性に声をかけました。
ひとり30分以内の相談でしたが、平日のお昼間で他に相談客がいなかったため、ファイナンシャルプランナーの池田さんは延長して相談に乗ってくれました。一美さんにとって心配だった共済年金と厚生年金の年金額の差についても説明してもらって安心したのでした。
解説
FPの相談
FP(ファイナンシャルプランナー)は、個人の顧客の資産設計の専門家です。顧客の望む生き方(ライフデザイン)からその生涯の生活設計を組み立てていくのです。
そして一美さんのように初回相談(初回は無料の場合と、FPによっては初回より有料の場合もあります。)で質問票に記入してもらいアドバイスをするのです。但し、初回の相談30分位ではFPも顧客の家族構成、年収、資産、保険等を把握するので精一杯ですから、通常は数回の面談を経て、20~30年先までの資金の収支であるキャッシュフロー表を作り、家計改善のための提案書にまとめます。これには時間と手間と費用が必要となります。
なお、作りっぱなしではなく、FPは作成したキャッシュフロー表や提案書を定期的(通常年1回)に見直し、失業や倒産、家族の死亡等の突発的な場合も見直しをして軌道修正の提案を続けていく、顧客の人生の伴走者と言えます。
公務員の年金
一美さんが心配していたのは、平成27年10月1日より公務員と私立学校教職員が加入している共済組合の年金が厚生年金に一元化されたからなのです。個人事業者や無職の方などは国民年金に加入されています。これを基礎年金といい、1階部分とも言います。次に被用者である会社員は厚生年金に加入しています。これは2階部分とも言われます。厚生年金加入者が受給できる年金額は1階部分に2階部分を加算した額なのです。それ故、個人事業者等よりも厚遇されていると言えます。
ところが、共済年金はその1階と2階部分に相当する年金額にさらに 「職域部分」 という3階部分の支給があったのです。そこが官と民との差がありすぎるということで共済年金は厚生年金と同一保険料・同一給付とされたのです。しかし、問題の「職域部分」は廃止となったのですが、新たに「年金払い退職給付」制度が創設されましたので、官民差が完全に解消されたわけではありません。
ちなみに、平成24年の法改正で公務員の退職手当は約400万円減額されています。
参考までに内閣官房内閣人事局で集計した結果による「国家公務員退職手当実態調査(令和4年度)」によると、常勤職員の定年退職時の退職手当平均支給額は21,122千円となっています。








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