外国語の習得

後継者が外国語、特に英語を日常的に聴き、話し、書くことができることを理想と考える保護者の中には、そのためにはできるだけ早期に英語教育を開始するのが良いと考えている方もおられることでしょう。
一方、日本語が十分身についていない時期から外国語教育を始めることは控えた方が良いという意見もあります。
特に留学を検討されている場合、その目的の主要な部分が外国語の習得であるならば、これからの時代の流れも含めて検討しておいてほしいのです。
インバウンド(訪日外国人旅行)

まず年別の訪日外国人客数の推移表をご覧ください。2020~2022年のコロナウイルス流行時期を過ぎて、2019年の最高値を超える勢いで訪日外国人客数が伸びているのがわかるでしょう。
訪⽇外国人客とは、外国人正規⼊国者から、⽇本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、これに外国人⼀時上陸客等を加えた⼊国外国人旅⾏者のことをいいます。駐在員やその家族、留学⽣等の⼊国者・再⼊国者は訪⽇外国人客に含まれます。乗員は含まれません。
児童・生徒の親世代の方、すなわち2024年現在で40歳の方の16歳時点である2000年の訪日外国人客数は約477万人、30歳の方の16歳時点である2010年の訪日外国人客数は約861万人ですが、どちらも訪日外国人客数は1,000万人に満たなかったのです。
しかし、今の児童・生徒は日本在住でも親世代がその年齢の時よりもはるかに多くの外国人に接する機会があることが良くわかります。2023年の訪日外国人客数は約2,506万人です。2024年は上半期で約1,777万人と過去最高値である2019年同期の数を100万人以上上回りました。
観光客以外に永住者等の外国人もいますから、クラスメートで外国人の方が身近に増えているのです。
また、コンビニエンスストア等で外国人従業員を見かけることも非常に多くなりました。彼らは積極的に日本語を身につけ、日本式の丁寧な接客を教育されて働いています。
インバウンド(訪日外国人旅行)に対しては、航空会社や電鉄会社をはじめ各企業が自動翻訳機を導入するようになっています。また、個人用の自動翻訳機やアプリも増えてきました。
自動翻訳機
メガホンヤク
成田国際空港(NAA)は、平成27年12月より平成28年3月まで、メガホン型自動翻訳機「メガホンヤク」を空港内に試験配備しました。これは株式会社パナソニックが研究開発を進めていた製品です。
その後パナソニックは平成28年12月20日から企業向けのレンタルでメガホンヤクのサービス提供を開始しました。
メガホンヤクは手に持つ電気式のメガホンに翻訳機能を付けたもので、災害や天候不良時にターミナル内に滞在される顧客向けに、日本語で喋ると、英語、中国語、韓国語に自動翻訳し、日本語も含めて4ヶ国語で自動的に大音量で流すことができるものです。
その後、平成30年JR西日本はメガホンヤクのソフトウエアを応用した「多言語音声翻訳放送システム」をTOUGHPAD(タブレット端末)に搭載し、駅構内の放送設備に接続しました。このシステムにより、駅のコンコースやホームに予め登録した英語・中国語・韓国語のご案内を放送することが可能になりました。
2019年3月22日現在で導入予定駅は25駅になっています。
参照:「メガホンヤクⓇ」のソフトウェアを応用した「多言語音声翻訳放送システム」の導入駅を拡大します!」JR西日本ニュースリリース
VoiceTra(ボイストラ)
話しかけると外国語に翻訳してくれる音声翻訳アプリです。個人の旅行者の試用を想定して作られた国の研究機関の作成したアプリであり、研究目的のサーバーを使用しております。
スマートフォン向けのアプリが無料でダウンロードできます。対応OSはiOS14.0以降またはAndroid8.0以降です。ご利用もすべて無料です。翻訳できるのは、現在31言語に対応しています。音声で入力し、音声で出力されます。
16歳未満の方は保護者の同意が必要です。

「多言語音声翻訳アプリ<VoiceTra(ボイストラ)>」
国立研究開発法人「情報通信研究機構」(NICT)、 「先進的音声翻訳研究開発推進センター」(ASTREC)
Google翻訳
Google翻訳は驚くべきことに108ヶ国語に対応しています。翻訳精度が進めば、外国語で書かれたサイトも全て正確な日本語で読むことができるようになるかもしれません。
• テキスト翻訳: 入力したテキストを 108 言語間で翻訳可能
• タップして翻訳: アプリ内のテキストをコピーし Google 翻訳アイコンをタップして翻訳(すべての言語に対応)
• オフライン: インターネットに接続しなくても翻訳が可能(59 言語に対応)
• リアルタイム カメラ翻訳: カメラを向けるだけで画像内のテキストを瞬時に翻訳(94 言語に対応)
• 写真: 写真を撮影またはインポートして、より高精度に翻訳(90 言語に対応)
• 会話: 2 か国語での会話をその場で翻訳(70 言語に対応)
「Google翻訳」
「VoiceTra」と「Google翻訳」の比較
・どちらも完全無料です。
・対応する言語の数では圧倒的にGoogle翻訳の方が多いです。
・VoiceTraは会話の翻訳を目的としていますので、短い文章の翻訳ができます。対してGoogle翻訳は長い文章 にも対応しています。
・例文「僕は車を運転して東京駅に行きます。」を翻訳すると、
VoiceTraでは「I drive to Tokyo Station.」と即時に翻訳文を表示し、同時に発声しました。
Google翻訳では、「I will drive to Tokyo Station.」と即時に翻訳しました。発生は音声ボタンを押すとしました。
携帯電話と自動車
さて、自動翻訳機が誤訳をほとんどせずに、スマートフォンなどの操作も不要で、喋るのを同時翻訳するように進化するまでどれ位の時間がかかるでしょう。まだまだ先の話だと思われるかもしれません。
私達が日常使う、手放せないとも言えるのがスマートフォンです。しかし、1987年に日本で初めてNTTが携帯電話機「TZ-802型」を発売しましたが(それ以前にもショルダーホンや自動車電話等はありましたが)、それは重量約900グラムと重く、本体にストラップの付いた、本当に必要な通話だけするというものでした。それから37年間しか経っていないのです。
また、自動車の自動運転技術については、あと10年以内に完全実用化できるかという段階にまで来ています。自動車は左足でクラッチを踏んで、ギアチェンジしていたものが、今ではほとんどの自動車がオートマチックです。業務用トラックでもそうなってきています。
疲れないし、左手、左足が自由になった便利はもう捨てられないですね。これにハンドル操作とアクセル、ブレーキペダル操作も要らなくなるとは夢のようですね。
ただ、電気自動車についてはバッテリー開発次第といったところでしょうね。
外国語習得の意味
ここまで読むと、もう外国語の習得の必要はないと思われるかもしれません。ソフトの進化を待つのみと考えるかもしれませんね。
確かに、携帯電話の構造を知らなくとも日常的に使い、自動車の構造を知らなくとも運転しています。その意味でいうと、言語の構造を知らなくともコミュニケーションが通じれば良いという考えも成り立ちます。
しかし、外国語を学ぶことは、その言語の構造を知ることだけでなく、その国の人の思考を知ることにもつながり、また、日本語を改めて深く知ることにもつながるという考え方もできます。
つまり、実用性だけで考えるのではないというものです。
英語教育大論争
日本の英語教育について、今から約半世紀前(1975年)の論争が今なお影響を与えていますので、ご紹介いたします。【広告】
「英語教育大論争」 平泉渉、渡部昇一 著、文春文庫(文芸春秋社、文庫版で1995年刊)
平泉渉参議院議員の「外国語教育の現状と改革の方向」(1974年、平泉試案)と、それに反論して「亡国の『英語教育改革試案』」(1975年)を発表した上智大学 渡部昇一教授の論争です。
渡部昇一教授は、その著書「知的生活の方法」がベストセラーとなって良く知られた方です。
「英語教育大論争」はこちらから購入できます。
なお、この論争の影響を受けた英語教育者も多く、現代ではどう変わったかについて、次の書籍もご紹介しましょう。
「英語教育論争から考える」 鳥飼玖美子 著、みすず書房
本書は、「英語教育大論争」を様々な角度から検証し、現在の英語教育、ひいては国語教育に有意義な議論を導き出す試みである。再検討から新たな提言へ。
こちらから購入できます。
「英語教育論争史」 江利川春雄 著、講談社選書メチエ
漱石の指導で英文学に開眼した藤村作の「英語科廃止論」、戦後の熱狂を生んだラジオ「カムカム英語」への批判、加藤周一の「英語義務教育化反対論」、渡部昇一と平泉渉の大論争、筑紫哲也と中村敬の英語帝国主義論争など、文明開化から、戦時下の「敵性語」時代を経て、グローバル化が進む現代まで、「日本人と英語」の百年余りを振り返り、これからの英語教育・英語学習を展望する。
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