11. 二世帯住宅の可能性
まえがき
坂元八造の妻一美さんは北千住での相談から帰宅しました。
ストーリー

竹の塚公団住宅の階段を上って4階にある自宅台所で夕食の用意をしながら、坂元八造の奥さん一美さんはきょうの話を思い起こしていました。
「共済年金に職域加算額はつくから大丈夫。」
「65歳からの厚生年金は共済組合から支給されるとFP(ファイナンシャルプランナー)の池田さんは言ってた。」
「支給開始を70歳まで遅らせれば支給金額が増えるとも言ってたわね。」
年金って難しいな、と一美さんは改めて思いました。
また、FPの池田さんとの話の後に、不動産会社の営業マンもアドバイスをくれました。
「東京23区内で、2階建の二世帯住宅を土地を買って新築で建てるのに、 6,000万円以内ではかなり厳しいって。」
「2階建だったら土地も40坪以上必要なので、土地代だけで 4,000万円以上になるのよね。」
「周辺の県まで範囲に入れるか、3階建にしたら土地は小さくても済むからどうかとも言ってたわね。」
一美さんは京都の生まれでしっとりとした古い街並みの中で育ちました。主人の八造は東京の下町の生まれ育ちです。二人ともおしゃれな高級住宅地には合わないと思っています。
「中古は検討されてないのですかとも言われたわ。」
「でも中古の二世帯住宅の数は少なくて、売主さんが建てる時に結構思い入れて、お金つぎこんだものが多いから、値段は高めですけどだって。」
「中古で出るのって、2世帯で建てたけど親子喧嘩ですぐ子世帯が出て行って仕方なく売るのかって、かんぐっちゃうわ。」
さらに、こんなアドバイスも受けたのでした。
「山手線の駅の外縁地域で中古マンションを2部屋買う方法もありますよだって。」
「親世帯を1階部分、子世帯を上階にすれば雨の日でも濡れなくて行き来できるし、味噌汁の冷めない距離ですよってうまく言ってたわね。」
「将来片方が空いたら賃貸に出しても良いし、売却しても良いから処分に困りません。2世帯の一戸建住宅は貸すにしても売るにしても、対象が限られるから値段を叩かれたり、長い間売れないこともあるらしいって。」
奥さんはきょうは相談に行って良かったわと思いました。でも、思った以上に2世帯で住むことって難しいのねとも感じました。
「さあ、晩ご飯の用意ができたわ。八造さんの大好きなナスの煮浸しも用意したし。」
「帰ってきたら相談しよう。」
解説
年金の繰上げ・繰下げ受給
坂元夫妻は公立中学校の教員を定年退職しましたから、年金受給額は1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金に加えてさらに3階部分の「退職年金(年金払退職給付)」及び「退職共済年金(経過的職域加算額)」が支給されます。個人事業者や民間の会社員に比べて優遇されていますね。
再就職した八造については65歳以降も在職の場合は在職老齢年金の受給になります。この場合年金の基本月額と給与の総報酬月額相当額の合算が50万円を超える場合は、一定額(最大全額)が支給停止になります。
さらに、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金は60歳より支給開始される繰上げ受給と、75歳まで支給開始を遅らせる繰下げ受給が選択できます。これは65歳から国民年金を受給開始した場合の支給額に比べ、繰上げの場合は1ヶ月毎に0.4%減額されます。(昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%(最大30%)となります。)繰下げの場合は1ヶ月毎に0.7%増額されます。
これにより、60歳支給開始の場合の支給額は、65歳支給開始時の支給額の76%(昭和37年4月1日以前に生まれた方は70%)に減額されたものが一生続くことになります。70歳支給開始の場合の支給額は、65歳支給開始時の支給額の142%に増額されたものが一生続くことになるのです。75歳では184%増額です。
ただし、75歳まで受給開始を遅らせたけれどそれまでに本人死亡の場合は、もちろん本人は受給できませんし、遺族は遺族年金の受給手続きをすることになりますがその場合繰下げて増額した分は考慮されません。増額される前の年金額を基準に遺族年金は計算されます。つまり受給が遅れた上に65歳で受給開始するのと同じ年金額で遺族年金が計算されるのです。ですから、一概に繰下げが得だとはいかないのです。
なお、老齢厚生年金の支給時期は、老齢基礎年金と独立して繰下げることが可能です。例えば、老齢基礎年金を65歳から受給開始し、老齢厚生年金は70歳まで待って月額を増やして受給開始するなどです。繰上げの場合は独立して繰上げることはできません。
もちろん、上記記載以外の諸条件で支給額等が異なってきますので、年金事務所、役所などでご確認できます。簡便な見積もりは「ねんきんネット」で可能です。
二世帯住宅
二世帯住宅には内部分離型と完全分離型があります。
内部分離型は建物の玄関は1つで1階部分を親世帯、2階部分を子世帯とします。玄関は共用となりますが、その他の設備、例えばキッチン、トイレ、浴室などを各階に別々に設置するか共用するかはそれぞれの家庭の状況とかかる費用で決められます。どちらかと言えば、親世帯が子世帯とコミュニケーションを取りたい度合いにもよるでしょうね。
完全分離型は上下分離(1階と2階で分ける)又は左右分離(2戸1の連棟にする)で玄関を含め全ての設備を別々に備えた作りです。プライベートは守られるが建築費用は最もかかります。どちらかと言えば、お嫁さんと義両親(又はお婿さんと義両親)との仲に左右されると思いますね。
どちらの型にしろ、通常の一世帯型住宅に比べて建築費用は高額になります。設備が複数となりますし、上下水配管もよけいに必要になりますから。細かくは親世帯の壁紙は母親の希望のものに、子世帯の壁紙はお嫁さんの希望のものにするだけでも高額になるのです。さらに子世帯のバスユニットの方が高級なものを希望したりしたらと悩みはつきません。
敷地面積と建物の関係では2階建の場合、一般的には土地30坪(約100㎡)では4LDKの間取りで駐車スペース1台分、土地35坪(約116㎡)で同じ4LDKに駐車スペース2台分と考えられます。二世帯住宅の場合は建物が通常の4LDKよりも大きくなるので土地40坪(約133㎡)はほしいところです。3階建の建築が可能な地域では駐車スペースを建物1階のガレージに入れられるので土地は20坪(約67㎡)でも最低何とかなるかなと思います。ただしホームエレベーターを付けたいなどと考えれば敷地面積はその分必要となりますが。(地域により建築の規制が異なりますので都心部など上記の土地面積以上が必要な地域もありますし、土地分筆の最低限度の制限を設けている地域もありますので一般論だとお考えください。)
さて仲介の不動産会社で私が営業をしていた頃にも何件か中古の二世帯住宅の販売を依頼されて契約したのですが、需要と供給のどちらも少ないのでマッチングが難しい、つまり売り難いのが実情です。普通の世帯の方はキッチンや浴室を2つは要らないです。使わないと配管が傷むのが早くなりますし、使ったら掃除が必要となりますから。
夢が膨らんでオプションもたくさん付けて建築費用は高額になりますので、中古で出す時にも高額になりがちで販売も難しいです。私の経験を一つ。大阪府吹田市千里山の二世帯住宅は内部分離型で敷地面積も広く高額で販売開始して時間がかかるかと思われましたが、千里山は大阪の阪急電鉄千里山線沿いの熟成した閑静な高級住宅地で人気の高いエリアでしたのでなんとか苦労なく契約に至ったことがあります。








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