13. 英才教育
まえがき
帰宅した坂元八造に妻の一美さんはFP(ファイナンシャルプランナー)相談を受けたことを報告します。
ストーリー

帰宅して直ぐ入った浴室からかすれた歌声で草津節を歌うのが聞こえてきます。
「この草津の湯の入浴剤は最高!」
「八造さん、きょうも機嫌良いわね。」と一美さんもうれしそうに夕食を温め直しました。
八造は体を拭いたバスタオルを首に巻いたまま、缶ビールをグっと飲んで、
「あ~、生き返った!」と満足げです。
「おっ、ナスの煮浸しがあるじゃないか。」と見つつ、右手の人差し指ですでにもう一缶開けています。
「お仕事はどうです。きつくない?」と、一美さんが問いかけます。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」と八造は左手を振って返します。
「いま、お客様のお受験の学校選びをしているとこだ。きょうも2件行って来たよ。」
「えっ、それは私立の学校の下見に行くわけ?」と一美さん。
「いやいや、小学校卒業したら外国の学校に入れたいらしいから、寄宿舎付の学校を紹介する会社へ行った。」
「すごいね~、日本でもそういうところあるんだ。」
「それが何社もあるんだよ。日本の私立大学より学費高いけどなあ。いわゆる英才教育ってやつだ。」
八造は今までの経験を生かした新しい仕事にやりがいを見出しているようです。
一美さんは「お父さん、ありがとう」と就職先を紹介してくれた父親に心の中で礼を述べました。
八造が何とか次の缶を自粛し、夕食を食べ終わって一息ついている頃を見計らい切り出しました。
「実は、私も報告することがあるんだ。今日、北千住に行くって言ったでしょ。」と一美さんが切り出します。
「ああ、買物に行ったんだよな。似合う服でもあったのか?」
「違うの。本当はね、お家の相談に行って来たのよ。ファイナンシャルプランナーさんに会ってきたの。」
と、八造の反応を待ちます。
「へえ、良く一人で行ったなあ。それで何と言われたんだ?」
「うん、予算は厳しいと言われたけど、生命保険とかの家計見直しすればもう少し余裕がでるって。」
「見直しはいいけど、無理はしないでおこうな。ここに結婚して35年住んでるんだから。」
「4階に上がる階段がキツクなったら考えたらいいよ。」と、あまり乗り気でない返事です。
「まっ、どうしてもというなら二世帯住宅でもいいけど、一八にこの近くで分譲マンション買わせて、頭金を援助してもいいんじゃないか。」
「とりあえず聞いてよ」と一美さんはFPに相談した内容と不動産会社の営業員から受けたアドバイスなどを詳しく聞かせ、うーんと唸った八造なのでした。
解説
FPとPB
FP(ファイナンシャルプランナー)は、主に個人の顧客を対象とした資産設計の専門家であり、家計がマイナスにならないように「キャッシュフロー表」を含んだ提案書を作成しアドバイスをします。独立系のほか、金融機関、保険会社に多くの有資格者が在籍しています。また、不動産会社と提携して住宅ローンの選択のアドバイスをしている場合もあります。一美さんが無料相談を受けたのはこのケースです。
保険会社に在籍するFPは自社の売りたい保険商品を勧めることになるでしょうし、不動産会社に在籍するFPは販売物件の住宅ローンで家計が大丈夫ですよと提案するようになりますので、完全に中立な立場で提案することは難しいのですが、FPはその中で顧客のために最善の提案をするように努めています。
実際、駅前にある保険の乗り合い代理店(何社もの保険を取り扱っています)に在籍するFPに保険の相談をして商品を選択することは、消費者にとって便利で自分で保険商品を選ぶ時間の短縮ができ、満足度が高く需要があるのです。
PB(プライベートバンカー)はFPに比べて対象者が絞られ、マス(準)富裕層~超富裕層の方にサービスを提供します。それは個人及び一族の資産の形成、運用、保全、承継に至るまでを網羅し、「投資政策書」を作成しコンサルタントします。また、経営している法人の展開や事業承継にもアドバイスします。金融機関、証券会社のプライベートバンク部門が担当することが多いですが、独立系に所属する者もいます。
日本のプライベートバンク業務は、スイスの伝統的なプライベートバンクとは違い、欧米の外資系金融機関のプライベートバンクサービスの進出から普及したものですが、運用(投資手数料収入)重視の経営スタイルが壁に当って外資系金融機関の撤退につながりました。その後は日本独自のPBサービスを銀行、証券会社が展開し普及を進め、外資系証券会社との提携などで業務の幅を広げています。日本のPBは顧客の相談を受けてコンサルタントしそれぞれの投資目的に合う資産運用と管理を提供していくという、営業数字に追われる通常の支店営業業務ではこなせない業務を担当しています。
したがって、日本のPBは金融機関が富裕層向けサービスを展開する部門の顧客担当者という位置づけになります。スイスの銀行員であるPBとは全く異なるものですが、日本の富裕層の特徴に合わせて進化しているといえます。
それ故、顧客サービスの展開として、例えば後継者の教育、進学、留学等のお手伝い、結婚式の準備、家族旅行の手配に至るまでする場合もあります。独立したファミリーオフィスではよりその範囲は広く、「執事」の様に努めるのです。坂元八造が外国の寄宿舎付の学校を探していますね。まだまだ見習いですが。
FPもPBのどちらも、弁護士、会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、不動産鑑定士、宅建士、建築士などの専門家との連携をしています。各資格には独占業務がありますので、それに抵触しないように気をつけながら協力して業務をこなすわけです。
英才教育
外国の寄宿舎付学校、いわゆるボーディング・スクールについてお話しましょう。通学が難しい生徒が学期中は寄宿舎で生活し、休暇期間は帰宅する方式です。イギリスで全寮制をとっているものはパブリックスクールと言われます。私立の小、中高一貫教育の私立校がほとんどですが、一部公立校も存在します。
現在、アメリカ、イギリス、カナダ、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなど諸国に留学できます。本格的に留学を考えた場合、小学校高学年か卒業時に留学して高校卒業まで在籍し、卒業後も外国の大学に進学することになるでしょう。中国の富裕層や韓国の財閥の子女などです。
学費等は初年度私立校で500万円以上で、往復の旅費、生活費、こづかい、オプションの教育選択などを入れると年額1,000万円近くかかると思われます。公立校の募集は少ないでしょうが、学費は200万円位からあるでしょう。これだけ費用がかかっても留学させる意味は、授業以外の寄宿舎生活も国際人としてのマナーを身につける場となっており、その国の大学進学にも有利だからです。
とりあえず短期留学で外国の学校を体験させたいならば、ANAが毎年スイスのボーディング・スクールの2~3週間のサマースクールを募集しています。費用は航空運賃を含めて約200~300万円です。受け入れは8歳~18歳です。こちらをご覧ください。動画で分かりやすく紹介しています。








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