15. 山林買収の疑い

2024年8月25日

まえがき

 兵庫県の山林の調査を依頼された伊勢信一郎ですが。

ストーリー

鴨川

 「兵庫県の山林の調査、ですか。」と伊勢信一郎が問い返します。

 「山林を含めた地域を買収し、アミューズメント施設を作る計画があるらしいのだ。」と榊周治は伊勢信一郎の目をじっと見て言いました。

 「まず実際にそのような計画があるのか、次にあるなら計画している者が誰であり、計画の内容と目的は何であるかまで分かる範囲で結構だ。」

 ほんの2~3秒ではありますが、しんとした時間がとても長く感じられます。

 「それは例の中国系企業が関係している疑いがあるということですか。」と伊勢信一郎がずばり聞きます。

 「現時点ではあくまでその疑いがあるだけである。我々が琵琶湖畔の土地買収を阻止してしばらく鳴りを潜めておったが、次に狙ってきたとしても不思議ではないからな。」と、腕組みをした榊周治が表情を変えずに答えます。

 「榊先生のことですので、私の社員に危険が及ばないようにしていただいていると信じ、お受けいたします。」と、伊勢信一郎も表情を変えずに榊の目をじっと見返しながら返答しました。

 「もちろんだ。何しろわしも娘を泣かすことはできんからな。」

 「どうじゃ、坂元八造は役に立ちそうか?」と、榊周治は自分の娘婿のことをおもしろそうに聞きます。

 「はい。私の望みました教育に造詣の深く、熱意を持つ人間です。もちろん、他の2名もとても優秀な人材です。」と、伊勢信一郎も少し口元を緩ませて返答しました。

 「実は、選ぶのに大分苦労した。正直、どれも無理やり引っこ抜いて来たようなものだからな。」と、榊周治はワハハと笑います。

 「知れば、私はたいそう恨まれそうですね。実際、開設したばかりの小さなオフィスにあれだけの人材は来ないでしょうから。」

 「うん、栗原美雪くんは大日本生命の会長が将来社を担う人物だとかなり抵抗しおった。なにしろ保険は言わずもがな、統計学に強く難関のアクチュアリーを一発で通った頭脳明晰であり、その上あの美貌で社交的と来とる。そりゃ、手放したくはないわな。また金田俊哉くんも素行に多少問題はあったが、ダイヤモンドサックスの稼ぎ頭であり幹部候補生だったからな。どちらも京帝大の選りすぐりの院生を穴埋めに何人か入れてやると言って納得させたが。」と、また面白そうな顔になります。

 「坂元八造は、わしに言わせれば馬鹿だが、生一本じゃ。熱意を持ってやる時は実力以上のものを出すじゃろ。」

 「ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」と、伊勢信一郎は改めて頭を下げました。

 「さっ、話はここまでじゃ。」と、パンパンと両手をたたいておかみを呼びます。置屋の芸妓も待ちくたびれていることでしょう。

解説

不動産の種類

 不動産を種類に分類することは、その不動産に対する権利を設定する上でも、その不動産の価値を評価する上でも重要です。

 権利設定上の見地から、不動産登記法では土地と建物に分けて表示に関する登記がされ、それぞれに所有権、抵当権等の権利の登記がされます。

 土地については、不動産登記法第99条「地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする」とあります。登記上は土地はこのどれかに分類されるか、地番が付されていない土地(公有地、赤線、青線)とされています。この地目は、現状の地目とは必ずしも一致していないことに注意が必要です。

 建物については、不動産登記法第111条「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」とあります。屋根と壁があり、定着することが必要なのです。そして「種類」は主な用途により、居宅、店舗、共同住宅などに分類されて登記されます。

 次に、不動産の価値を評価する上での見地から、不動産鑑定評価基準では「不動産の種類とは、不動産の種別及び類型の二面から成る複合的な不動産の概念を示すものである」としています。

 不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいい、地域の種別として宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられます。さらに、土地の種別として、地域の種別に応じて分類される土地の区分があり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分されるとしています。これは土地に関しての分類です。

 不動産の類型とは、宅地並びに建物及びその敷地の類型であり、宅地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、更地、建付地、借地、底地、区分地上権等に分けられます。建物及びその敷地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられます。