26. テーマパーク

2024年8月25日

まえがき

 坂元八造と金田俊哉は不動産業者の深田金司の開発業者あぶり出し作戦に驚愕する。

ストーリー

ジェットコースター

 六甲アイランドへ向かうビンテージのクリーム色いすゞべレット1500の車内では、ハンドルを握る金田俊哉とその助手席に座る坂元八造が同時に叫んでいました。

 「客室700室のホテルって、そんなの都心のシティホテルか、ディズニーやUSJのオフィシャルホテル並みですよ。そんな嘘、絶対におかしいと思うって!」と、金田俊哉は運転しながら反対します。

 「これは実在の世界的なホテルチェーンじゃないですか。その日本法人の代表者などと、問い合わせたらすぐにバレますよ!」と、坂元八造は後部座席で腕を組んだままの深田金司に言います。

 「お前らは本当に甘ちゃんじゃのう。わしがそこらの手を打ってへんと思うとるんか。まず、ホテルの客室数じゃが、金田よ、お前いまオフィシャルホテル並と言ったのう。わしはタワーホテルとテーマパークを建設すると言ったじゃろ。テーマパークはアメリカのセブン・フラッグスとライセンスを結んで造るとする。どうじゃ、700室分の客を呼べんか。」と、深田金司は組んだ左手で左の頬をさすりながら言いました。

 「えぇー!セブン・フラッグスは絶叫マシンが沢山あることで有名な遊園地じゃないですか。確かアメリカに20ヶ所近くとカナダとメキシコにもあるはず。もし色々な種類の絶叫マシンが日本一あるテーマパークができるとしたら、日本中から絶叫マシン大好きな家族とか友人とかが集まって700室も可能かもしれない。」と、金田俊哉が唸ります。

 そして、深田金司は後ろを振り向いている坂元八造の目を見て言いました。

 「坂元よ、そのホテルチェーンにはまだ日本法人はない。そしてそのファンドもまだないがどちらもこのプランのために設立する予定にする。名刺の連絡先には電話受付を準備した。また、念のため、伊勢さんがホテルチェーンのスイスの本社とセブン・フラッグス本社に話をつけてくれておる。」

 「伊勢所長が!そうしたら、この詐欺は伊勢所長も承知済みということなんですね。」と、ポカンとした顔の坂元八造。所長の伊勢信一郎がそんな大会社に事前交渉していたことにも驚きを隠せません。

 「嘘だとか詐欺だとか。お前ら、ええか、法螺ほらはでかければでかいほど、人は信じるもんなんじゃ。それにこれは正義のためにしていることじゃ。」と、深田金司は怒り声で吐き捨てます。

 「わしが何故この作戦を練ったか教えてやる。この数日、お前らといっしょの時以外も有馬町での怪しい開発の動きがないか探しとった。しかし、何も出てこん。これは、敵が余程慎重な奴だというこっちゃ。間抜けな奴じゃったら、片っ端から地権者に買収価格を提示して交渉をしようとするところじゃ。もし、そんなことしたら、狭い地域じゃ、地権者同士であいつはいくらで売ったとか疑心暗鬼になってすぐ交渉が行き詰るところなんじゃが。」

 「それに、そういう地方の地域には、1件くらい村八分になっとる地権者もおる。勝手に隣の所有地に畑を越境して耕す者とかな。こういう地権者の交渉は一筋縄ではいかん。そいつが頭が上がらん人を探してまず味方に付けてその人を介して交渉せなならんからじゃ。敵はそういうことをよく分かっとる奴じゃから、十分準備した後でなきゃ、へたに動かんのじゃ。」

 「有馬町は日本三古泉とも言われ、天皇もお越しになられたこともある名泉じゃ。有馬地区は「まちなみ基準」市民協定も結ばれ、情緒ある景観を守るための建物の制限もあるところなんじゃ。そして、公的湯治場である「金泉の湯」、「銀泉の湯」、並びに各旅館・ホテルも浴場を一般公開しておる。」

 「今回その「まちなみ基準」に含まれる地域であり、地元の協力を得るためにも、建物の外観等に配慮し、すでにある温泉や宿泊施設を増やすのでなくそちらの収益増加にもつながるような開発にするのではないかと思う。名産や名品などはもちろん、高級で上品な商品を取り扱う商業施設を作るとか、じゃ。」

 「そうすると、有馬温泉へのアクセスが最重要となる。地方からや大阪からの観光客は、梅田から直通の高速バスもあるが、たいていの客は阪急電車で宝塚まで来るじゃろ。阪急梅田駅は始発駅じゃから座って来れるしの。JR三ノ宮駅からもバス便があるが、こちらも神戸市営地下鉄北神線と神戸電鉄を使えば30分で来れる。じゃから、宝塚駅からどのように有馬温泉につなぐかが問題となる。せっかく来た観光客は、宝塚歌劇も見たいし、遊びたい、温泉も入りたい、そして宿泊してうまい物も食べたい、記念となる高級土産品の買物もしたいんじゃ。それには、豪華仕立てのシャトルバスしか考えられん。」

 「宝塚駅、宝塚ホテル、宝塚歌劇、手塚治虫記念館は絶対ルートに入れにゃならん。昔は家族連れは宝塚歌劇併設の「宝塚ファミリーランド」によう来たもんじゃ。USJやこちらも潰れてしまったが大阪万博跡のエキスポランドもまだなかった頃、遊園地と言えば、北は宝塚ファミリーランド、南は奈良ドリームランド、菊の季節には大菊人形の枚方パークと決まっておったんじゃ。この宝塚ファミリーランドが閉園して、「宝塚ガーデンフィールズ」というドッグパークを作ったがわずか10年で閉鎖じゃ。宝塚市はようやくその跡地の南側の3分の1だけを買収して公園などを作ったが、遅きに失したと思う。観光収入を取り戻すのは一苦労どころではないわ。」

 「家族連れを誘致できる魅力のある観光施設であるテーマパーク計画があれば、必ずルートに入れたいと、敵さんからアプローチが来るはずじゃ。じゃから、これからその種まきをするんじゃ。」

 すでに金田俊哉はいすゞべレット1500を路肩に止めて、二人揃って深田金司の話に聞き入っていました。

解説

不動産投資の判断基準

 不動産投資をするべきかしないべきかの判断基準について説明しましょう。

収益還元法

 不動産鑑定評価基準では、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効な手法を収益還元法とし、求める価格を収益価格としています。収益価格を求める方法には、直接還元法とDCF(Discounted Cash Flow )法があるのですが、特に証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならないと規定しています。(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節 DCF法の適用等)

DCF法

 DCF法とは、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割引率で割り引き、それぞれを合計する方法です。

 たとえば、ある賃貸マンションが1年後に120万円、2年後に140万円、3年後に160万円の収益を上げておりその後3,000万円でその賃貸マンションを売却するケースを考えてみましょう。それぞれの年の純収益を現在価値に割り引いて、1年後の120万円は現在価値で100万円、2年後の140万円は現在価値で100万円、3年後の160万円の現在価値も100万円とし、3年後の売却価格(復帰価格)3,000万円の現在価値が2,200万円とします。その場合、その収益物件の現在価値は100万円+100万円+100万円+2,200万円=2,500万円になるという考え方です。

 純収益とは、不動産に帰属する適正な収益のことです。復帰価格とは、保有期間の満了時点における対象不動産の価格をいいます。

NPV法

 こうして投資した不動産が投資期間中に生み出す収益を複利原価率で割引いて現在価値を求め、そこから投資額の現在価値を控除して正味現在価値を計算して、投資不動産の価値を算出する方法をNPV(Net Present Value)法といい、このNPV値が0又は正の値であれば、その投資は承認されます。そして、そのプラスが大きいほど投資価値は高いということになるのです。

IRR

 また、純収益と復帰価格の現在価値の合計額と投資額の現在価値の合計額が等しくなる時の割引率を内部収益率IRR(Internal Rate of Return)といい、このIRRが大きいほど、投資価値は高いとされるのです。