28. 六甲アイランドシティ

2024年8月25日

まえがき

 いすゞベレットはいよいよ都市再開発コンサルタント会社のある六甲アイランドに上陸します。

ストーリー

六甲アイランド・神戸ファッション美術館

 クリーム色のビンテージ車いすゞべレット初期型1500ccは、JR三ノ宮駅を出発し、ニコク(国道2号線)からヨンサン(国道43号線)へ出て東進し、「東御影ひがしみかげ」の交差点を右折すると、「清酒白鶴」の看板が見えてきました。

 「白鶴の大きい工場ですね。」と、 助手席の坂元八造が車の窓から見上げて言います。

 「いや、本社じゃ。見てみ、青地に白い鶴が飛翔する看板が出ておる。」と、後部座席の深田金司が答えます。

 「この神戸市東灘区 御影みかげには、主な酒造が集まっておる。いわゆる灘五郷の一つ、御影郷じゃ。「灘の生一本きいっぽん」を聞いたことがあるじゃろ。三木、吉川よかわ、三田市生産の酒米の王者「山田錦やまだにしき」など良い酒用の米が手に入り、旨い「宮水」とで清酒造りが400年近くも続いておるんじゃ。」

 「いま灘の生一本には、白鶴、黒松白鹿、浜福鶴、日本盛、道灌、沢の鶴、櫻正宗、剣菱、菊正宗、大関と、聞くだけでよだれが出そうな純米酒ばかりがある。」と、深田金司は喉をゴクンとさせました。 つられて、おもわず坂元八造もゴクリと唾を飲み込みます。

 そしてべレットは六甲大橋を渡ります。神戸新交通の「六甲ライナー」が併走しています。六甲ライナーは、JR住吉駅と六甲アイランド内マリンパーク駅の約4.5kmを結ぶ、高架構造の自動無人運転システムで、未来都市をイメージさせる人工島六甲アイランドのシンボル的存在です。

 アイランドセンター駅前の複合施設神戸ファッションマートの駐車場にべレットを入れ、初めて来た坂元八造と金田俊哉は中心部を流れる人工川のリバーモールで街を見回しています。

 「近未来の街のようですねえ。あれなんかエンタープライズみたいだ。」と坂元八造が神戸ファッション美術館の円盤状の建物をボーっと見上げています。

 「ヒルズとは比較にならないけど、まあ良いんじゃないですか。ちょっと建物が古いけど。」と、上から目線で金田俊哉が言います。

 「このリバー沿いは夜はカラーライトアップをして夜景がきれいなんじゃ。」

 「最近は、何じゃ、ほれ、仮装の衣装着て写真をよく撮りに来よるわ。」と、深田金司が答えます。

 「それは、コスプレの撮影ですよ。」と、金田俊哉はキョロキョロと撮影してないかと探します。

 「ああ、でもこれからのことを考えると緊張するねえ。」と、坂元八造はうまく演技ができるか心配しています。

 「坂元さん、大丈夫ですよ。僕はこういうのは得意ですから。」と、金田俊哉はさんざんプレゼンをしてきた経験が自信となっています。

 「その調子じゃ。そろそろ行こうかの。」と、深田金司はサッサと歩き出します。

 三人はいよいよ都市再開発コンサルタント会社へ出向いて一芝居打つのです。

解説

神戸市の開発手法

 神戸市では、昭和39年以降より六甲山系で住宅地開発をし、残土を神戸港の埋立てに用いて、第一に中央区に「ポートアイランド」、第二に東灘区に「六甲アイランド」の名称の人工島を建設しました。この人工島の都市計画は、建築家 水谷頴介みずたにえいすけ氏の代表作となっており、神戸には神戸大学工学部建築学科出身の水谷氏の弟子としての建築家・都市計画家が多く活躍しています。

ポートアイランド

 ポートアイランド(愛称「ポーアイ」)は、総面積約826ha(第1期約436ha・第2期約390ha)、人口13,516人(令和6年6月30日現在、住民基本台帳)であり、阪神淡路大震災後の復興で、神戸市は医療産業都市を目指しており、ポーアイは日本最大級の医療産業クラスター(集団)となり、また神戸学院大学、兵庫医科大学など6大学の誘致にも成功しています。官庁主導型の街づくりが特徴と言えます。

 第2期内には理化学研究所計算科学研究センターのスーパーコンピューター「京」が2012年9月より共用開始し、その後継機としての「富岳」が2021年3月より共用開始しました。また、住宅エリアは共同住宅のみで戸建住宅は存在していません(震災後一定期間、仮設住宅が建設・居住されていました。)。人口予定は第1期2万人でしたが、現状はその67.6%に留まっています。

六甲アイランド

 六甲アイランド(六甲アイランドCITY愛称「RICリック」)は、総面積約580ha、人口19,291人(令和6年6月30日現在、住民基本台帳)であり、住宅エリアではポートアイランドとは異なり、共同住宅の他に新築分譲の戸建住宅エリアも造られました。販売当初は、1億円超の分譲価格の設定で話題を呼びましたが、現在は築25年の土地176㎡付木造2階建一戸建中古住宅が7,500万円で販売中となっています。一方、マンションは積水ハウスが分譲したものが中古で3,000万円台を中心に販売されています。街づくりは積水ハウスが担当したといって良いでしょう。ポーアイに比べて、マンションの外壁にカラフルな色が使われています。また、大学等の誘致や外資系企業誘致にも成功しています。人口予定は3万人でしたが、こちらも64.3%に留まっています。

日本都市計画学会・石川賞

 公益財団法人日本都市計画学会では、都市計画に関する独創的又は啓発的な業績により、都市計画の進歩、発展に顕著な貢献をした個人又は団体を対象として、石川賞を設けています。

 1980年度(昭和55年)に作品「神戸ポートアイランド」で当時の神戸市長宮崎辰雄氏は石川賞を受賞しています。受賞理由として、山を削って海面を埋め立て、双方に新しい都市空間を創造する20世紀におけるユニーク、かつ超大型の都市づくりであり、21世紀の文化財となりうる所産として誇れるものであるとしています。

 この事業では、新交通システムの導入と、世界最大級の土量と各種公害の回避をはかった土砂運搬方式、圧密埋立方式などの特徴がありました。

 なお、神戸市は1993年にも神戸ハーバーランド都市計画で石川賞を受賞しています。

 参考までに、東京は2013年度(平成25年)には次の2つの都市計画が石川賞を受賞しています。

 一つは、「地域主体による、銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会の活動」(銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会)です。地区計画に基づく銀座通りなどの高さのルールを維持する決定を行い、また銀座デザインルールを作成し運用している先進的かつ独創的な街づくりが評価されました。

 もう一つは、金田俊哉が引き合いに出した、「六本木ヒルズにおける街づくり」(森ビル株式会社)です。開発プロセスにおける多数の地権者との合意形成や事業化に至る経緯、開業21年経過で「まちを運営する」段階まで続いている都市再生であり、新しい文化・情報を発信していること、「逃げ込める街」に向けて自家発電のエネルギープラントが東日本大震災時にも電力供給を途切れさせなかったことなど、21世紀初頭を代表する大規模都市開発のモデルとして高く評価されました。