38. 国土買収の方法

2024年8月25日

まえがき

 伊勢信一郎は敵の国土買収の方法を明かし、対策としてのテーマパーク建設計画を述べます。

ストーリー

空地

 ファミリーオフィス銀座の所員3名と、リーダー栗原美雪の知人であるらしい上流階級の女性が特別傍聴室からガラス越しに見入っている中、伊勢信一郎の説明が続きます。

 「琵琶湖畔の買収工作時、多国籍犯罪企業WSSPの日本法人である一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)の買収方法が明らかになりました。」

 「先ず、不動産コンサルタント会社に現地調査及び土地所有者との買収交渉をさせ、次に買収会社である特別目的会社(SPC)を設立させて、SPCにこの日本法人が匿名組合員として出資をするという手法で、国土買収を目論んでおりました。」

 「不動産コンサルタント会社が表に出て動き、SPC設立後はその運営をするアセットマネージャー(AM)となります。不動産特定共同事業の許可は不要で届出だけでこのファンドを設立できます。」

 「そしてこのファンドへの適格特例投資家である匿名組合の組合員となる日本名勝保護協会(JSSP)は極力表に出てこないようにしていたわけです。」

 「この買収工作が失敗したのは、東京都内の不動産コンサルタント会社を選定したのですが、このコンサルタント会社は関西の地価相場等に不慣れなために地元の不動産仲介業者を使って大っぴらに動いたため、我々もその動きを察知できたからです。」

 「しかし、今回の有馬温泉周辺の土地買収工作は、大阪市内の不動産コンサルタント会社に依頼し、この業者が非常に慎重に動いていたため、我々はなかなかその動きを察知することができませんでした。」

 「したがって、こちらから探しても分からないならば、相手から接近させようという作戦に変更したのです。」

 公益財団法人みやこ財団ビル地下2階の特別会議室で秘密開催されている「国土防衛会議」 での伊勢信一郎の一言一言に、列席の理事と政府高官達は聞き逃すまいと聞き入っております。

 「今回の作戦は、みやこ財団の理事であり、芦屋市在住のS友不動産相談役 深田金司氏、及びファミリーオフィス銀座の所員2名が担当いたしました。」

 「えぇ~!深田のじいさん、みやこ財団の理事で大会社の相談役かよ!駅前の小さな不動産屋のじじいと思ってたのに。」と、特別傍聴室から見入っていた金田俊哉は、自分の失礼な言動を思い出して顔面蒼白です。

 「確かに、きれ者とは思ったけど。まさか、旧車のべレットに乗っている人が。」と、坂元八造も驚いてべレット愛好者に失礼な発言をしています。

 「お手元の資料とこちらのモニターをご覧下さい。みやこ財団の新規投資案件として、宝塚市のゴルフ場を買収し、その跡地150haのうち、90haに日本初上陸のアメリカの「セブン・フラッグス」テーマパークを誘致します。」

 「また、こちらも日本初進出の世界的ホテルチェーン「ザ・オーバーヘッドホテルズ」の客室数700室のオフィシャルホテルの建設も致します。残りの60haはテーマパークとホテルの全電力を供給するメガソーラーを設置する計画でございます。」

 伊勢信一郎はモニターに映る宝塚すみれゴルフ倶楽部の映像をレーザーポインターで指し示して説明しています。

 「JR及び阪急電鉄「宝塚」駅より、車で約11分の立地です。この事業計画で、駅からの交通の便としてシャトルバスの運行も予定していると、六甲アイランドの都市再開発コンサルタント「神戸再開発ファーム合同会社」に相談を持ちかけ、コンサルタント契約を締結しました。」

 「深田理事により、このコンサルタントに敵も依頼をしているとの情報を入手したのです。敵は有馬温泉の山林を含めた土地を買収し、アミューズメント施設と高級ショッピング施設を建設し、それを隠れ蓑に国土と地下水源を取得する計画らしいとの情報でしたので、次の2つの餌を用意しました。」

 「1つは、敵の観光施設のシャトルバスルートに当方のテーマパークを入れることで、多くの集客が見込めるという餌です。」

 「もう1つの餌はメガソーラーに利用する太陽電池です。この太陽電池は、レアメタルであるインジウムを使わない、ノンシリコンの単層CNTカーボンナノチューブ製透明電極を用いた、世界初の有機薄膜ぺロブスカイトハイブリッド太陽電池(OPHS)です。」

 「敵の本体の多国籍企業はCNTを世界中より購入しています。兵器製造に使われている疑いがありますので、この太陽電池(OPHS)にはかなり興味を持つと予想されます。」

 「この太陽電池(OPHS)の実用化への投資も含め、新規投資額1,800億円を計画しており、事業計画書を提出させていただきます。」と、伊勢信一郎は列席の理事を見回して述べました。

解説

私募ファンドスキーム

 多国籍犯罪企業WSSPの日本法人である一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)が国土買収に用いる方法を解説します。

適格特例投資家限定事業

1. JSSPが依頼した不動産コンサルタント会社が表に出て目的の不動産の買収交渉を進めます。

2. 不動産買受けの受け皿となる特別目的会社(SPC)を設立し、不動産コンサルタント会社はアセットマネージャー(AM)となりその特別目的会社(SPC)の運営をします。

3. 投資家を適格特例投資家に限定して不動産特定共同事業を行う場合には、「適格特例投資家限定事業」として国土交通大臣の許可不要で届出をして事業を行うことができます。

4. 多国籍犯罪企業WSSPの日本法人である一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)は適格特例投資家の匿名組合の組合員となり資金提供をします。

5. 適格特例投資家限定事業者であるSPCと適格特例投資家である匿名組合の名称届出は必要ですが、組合員の名称等の届出義務はなく、JSSPは表に顔を出さないで投資できるというわけです。

JーREIT

 J-REIT (Japanese Real Estate Investment Trust) は、日本版リートと呼ばれる、日本版不動産投資信託のことを言います。根拠法は、「投資信託及び投資法人に関する法律」(昭和26年6月4日、最終改正令和6年5月22日施行)です。

 「この法律は、投資信託又は投資法人を用いて投資者以外の者が投資者の資金を主として有価証券等に対する投資として集合して運用し、その成果を投資者に分配する制度を確立し、これらを用いた資金の運用が適正に行われることを確保するとともに、この制度に基づいて発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、投資者による有価証券等に対する投資を容易にし、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」(第一条)

 この投資法人が SPV(特別目的事業体)に該当します。J-REITの特徴は、賃貸用不動産を投資対象とする金融商品であり、その「投資口」を上場することで広く資金調達ができることです。

J-REITのメリット

1.配当可能利益の90%以上を分配する。これにより、投資法人に法人税がかからない恩典がありますので、投資家は家賃収入等からの安定的で多くの分配利益を得ることができます。

2.投資家は小口投資ができ、一定の流動性がある投資ができます。また、不動産の管理の手間もかからず、複数の投資口にリスクを分散も可能です。

3.売買注文は株式と同様に、証券会社の窓口やネットでも注文できます。

J-REITのデメリット

 主なリスクとして、元本割れリスク、分配金変動リスク、倒産化リスク、災害等リスク、法制度変更リスクなどが考えられます。

 つまり元本保証されておらず、市場や天災地変等に影響を受ける商品であることを理解しなければなりません。

J-REIT スキーム

1.投資法人の設立

 投資法人には数人の役員(執行役員と監督役員)のみで、従業員はいません。

 資産の運用や保管、その他一般事務は外部の専門家に依頼します。

2.資金の調達

 デット(負債)での調達は、銀行等の金融機関からの融資や、投資法人債の発行です。

 エクイティ(資本)での調達は、上場市場での投資口の発行。不特定多数の投資家から公募で調達できます。

3.不動産の取得、運用

 賃貸収益が見込める不動産を集めた資金で取得します。

4.利益の分配

 配当可能利益の90%以上を分配します。