47. 独立運動の目的
まえがき
独立運動の目的を調べるため伊勢信一郎が立ち上がります。
ストーリー

坂元八造と金田俊哉が新神戸に向かうのぞみ号の車内電光掲示板で見た、中国新疆ウイグル自治区カシュガル地区周辺地域を武装勢力が占拠して独立国家を宣言したニュースを時事通報社が報じた後、国内マスコミが一斉に報道を開始し、ワイドショーでも特集を組んで連日放送されました。
しかし時事通報社の初報のおよそ6時間前には、公益財団法人みやこ財団の理事長室で、榊理事長は内閣官房長官とのホットラインで事態を知り、意見を求められていました。
「ええ、カシュガル地区での独立運動なら、東トルキスタン共和国の復興を目指してのものと思われます。」
「しかし、武装勢力による占拠ならば、世界ウイグル会議やアメリカ・ワシントンを本拠とする東トルキスタン共和国亡命政府は関与していないでしょう。彼らは平和的解決を望んでいるはずですから。」
「最も考えられるのは、東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の急進派残党が動いたことでしょう。ただし、その残党の存在自体も不明なのですが。」
「イラクとシリアを追われアフガニスタンに逃れたイスラム過激派組織ISILが流入しているという説は、中国による情報操作の可能性があります。」
「どちらにしても、これを仕掛け、武器の提供など支援している国家ないしは組織が裏にいると考えられます。」
「かつての東トルキスタン独立運動ではソビエトの援護がありましたが、現状では東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)は存続しているかも怪しくアメリカからもテロ組織指定が解除されております。」
「また、プーチンも狂犬を隣人にしたくないでしょうから、ロシアの援助は望めないでしょう。いつ自国に攻め入るかもしれませんので。」
「確かに中国によるイスラム教徒への弾圧は厳しさを増してはいますが、過去2度の独立失敗を経て、今また戦争状態にすることは現地のウイグル人が被害を受けることを考えると、それを実行に移したのは何か特別な目的があったのかと思われます。」
「どちらにしろ、中国に迂闊(うかつ)に手を出させないために、それなりの兵器を所有している可能性が高いと考えられます。」
「ええ、そうです。核か細菌兵器かもしれません。そちらから調べられてはいかがでしょうか。」
机の引き出しの中に入れている、首相官邸とのホットラインの赤電話を切り、目の前のイスに座っている伊勢信一郎に事態を説明し、榊理事長は大きなため息をつきました。
「悲しい話じゃ。世界には平和を求めるものもおれば、戦争を起こして利益を得ようと働くものもおる。どう考えても、今回の事件は純粋な独立運動とは思えん。」
「あの多国籍犯罪企業が関与しているかもしれませんね。何が目的なのか、わかる範囲で調べてみます。」と、伊勢信一郎はすっくと立ち上がりました。
※
のぞみ号は新神戸駅に正午前に時間通りに到着しました。
JR新神戸駅は新幹線だけが停車する駅であり、JR三ノ宮駅の北東方約1.4kmのところに位置します。
六甲山系の山裾にあり、北側へ赤い6人乗りゴンドラの神戸布引ロープウェーで約10分登ると、ハーブガーデンが香しい神戸布引ハーブ園があります。
約200種7万株のハーブや花が咲き、日本最大級のハーブ園として有名なのです。
さて、坂元八造と金田俊哉の二人は、新神戸駅の南側に連絡橋で直結しているANAクラウンプラザホテル神戸に来ました。
地上37階地下3階建の高層ホテルで屋上は切妻屋根のように尖っているのが特徴です。地下3階部分は、神戸市営地下鉄・北神線新神戸駅の改札とつながっています。
このホテルのロビーで正午に深田理事と待ち合わせしているのでした。
「坂元さん、このすぐ西側が神戸北野坂の異人館街なんですよ。有名な風見鶏の館もあるところで、異国情緒が楽しめます。時間が余ったら行きましょうよ。」
金田はソファーに寝そべるように座り両足を前に放り出したまま坂元に向かって言いました。
「ああ、テレビで見たが、座ると幸運になる『サタンのイス』がある異人館もあるところだろ。」と、坂元は高級なホテルが落ち着かない様子でキョロキョロしています。
「それはサタンじゃなくて農耕神『サターンの椅子』ですよ。それに幸運になるんじゃなくて、願い事がかなうんですよ。男女用2つの椅子があるっていう、確か山手八番館ですね。」
「やけに詳しいなあ。何でそんなに詳しいんだ。」
世界で危機が迫っているのにのんきな会話をしております二人なのでした。
解説
カシュガル
新疆ウイグル自治区カシュガル地区の中心、カシュガル市(喀什市)は中華人民共和国の最西端にあり、シルクロードの貿易地であって中国とパキスタン、チベットなどの中央アジアとを結ぶ要衝となっています。
イスラム教徒のウイグル人が人口の8割を占めているといわれ、砂漠気候でもあり、街並みは中国ではなくイスラム圏の都市であり、中心部にイスラム教徒がアッラーの神に祈りをささげる寺院であるエイテイガールモスクがあります。
シルクロード人気から日本人観光客も多く、市場ではバザールも開かれて活気があるようです。なお、新疆とは、新たに平定した境界内の土地であり、中国共産党の支配地という意味です。
個人の国際課税
日本人の超富裕層の海外移住先としては、タックスヘイブン(租税回避地)のような低税率の国が望まれ、シンガポール、香港、東南アジア、ハワイ、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨーロッパなどが検討されますが、よほどの資産がないと難しく、また日本の国際課税の強化もブレーキをかけています。
我が国の国際課税の基本的考え方
我が国の現行の所得税法及び法人税法は、自国の居住者、内国法人に対しては、その所得の源泉が国内であろうと国外であろうとすべて課税の対象とする「全世界所得課税主義」を採用するとともに、国際的二重課税の排除方法として「外国税額控除方式」を採用しています。
また、非居住者・外国法人に対しては、国内源泉所得についてのみ、一定の範囲で課税することとしており、国内源泉所得の判定については、事業又は資産から生ずる所得(一号所得)に係る包括的ソース・ルールと、その中から源泉徴収になじむものを取り出した個別的ソース・ルールを定めています。
なお、これらのソース・ルールが租税条約におけるソース・ルールと異なる場合には、租税条約の定めるところによることとされます。
(国税庁サイト 税務大学校「国際課税のあり方と今後の課題について-最近の国際課税に関する諸問題(国際的租税回避等)を踏まえた我が国の国際課税の基本的な考え方の検証-」より)
個人納税者の区分と課税所得の範囲
・居住者
国内に住所を有する個人又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人は、その全ての所得(全世界所得)が課税所得の範囲となります。
・居住者のうち非永住者
日本国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人は、国内源泉所得と国外源泉所得(国内払い・国内送金分に限る)が課税所得の範囲になります。
・非居住者
居住者以外の個人は、国内源泉所得のみが課税所得の範囲となります。
国外転出時課税制度
平成27年度税制改正により、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」(以下「国外転出時課税」といいます。)が創設され、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の有価証券等(以下「対象資産」といいます。)を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税(復興特別所得税を含みます。)が課税されることとなりました。
(注)平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになります。
一定の場合、国外転出の日から5年間納税を猶予する納税猶予制度があり(延長の届出により最長10年間)、納税猶予期間の満了日の翌日以後4か月を経過する日が納期限となります。
参照:「No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」国税庁サイト








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