6. 不動産コンサルタント
まえがき
大阪ではあやしい組織が動き始めます。
ストーリー

大阪市北区と中央区の境、堂島川と土佐堀川に挟まれた中之島には中央公会堂、大阪市役所、日本銀行、リーガロイヤルホテル、大阪国際会議場と大阪の心臓部を担うと言われるビルが並んでいます。
その中で前面がラウンド型のビル形状で輝くような総ガラス張りがひときわ目立つ高層集合オフィスビル内の自社応接室で、代表者の西川真は訪問客と向き合って座っていました。原則として初めての顧客に西川が直接会うことはないのですが、得意先の役員からの紹介であり、多額の手数料収入も見込めそうだったので会うことにしたのです。
交換した名刺には一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)と団体名が記載されその下に訪問客の氏名がありました。
氏名は日本人だが、と西川は違和感を感じていました。30代らしい訪問客は流暢な日本語で身なりしぐさもソツがなく非をつけようがないのですが、東洋人ではあるが日本人ではないなと彼は思いました。
しかしそれは本依頼に何の関係もないことだとひとまず心に押し込んで西川が尋ねます。
「するとこの温泉地にショッピングセンターを建設したいということですか。」
「そうです。有名ブランドショップと総合スーパー、それにアミューズメント施設を点在させます。エリアには温泉施設がありますから、相乗効果が得られると思います。」と訪問客はスラスラと答えます。
「確かに、保養地としては良いが近隣にそのような施設はありませんな。いや、車で30分ほど北に行ったところにアウトレットの施設がありますか。それとは競合するでしょう。」
「いえ、こちらの東方向の駅までの間にシャトルバスを走らすことを考えています。約20分ほどで行けますし、駅前にはこれがありますから。」
顧客が指で示す地図上の施設と温泉地が結びつきました。
顧客が帰ったあと、デスクチェアに座って西川はあらゆる可能性を考えてみました。
「確かに面白い。しかし難しい。」
クリアしなければならない問題はかなり多く交渉は困難であろうと予想されましたが、チェアから立ち上がったときには西川の心は決まっていました。
「俺にもツキが回ってきたかもしれない。」
西川は今は不動産コンサルタントと総合不動産投資顧問業を営んでいます。年齢は50を少しまわったところです。これまで積極的にメディアにも露出して宣伝し、業界内でもかなり名の知られた存在となっています。顧客に助言だけでなく、投資一任契約を結びJ-REITで資産運用しており業績は上々です。しかし彼の向上心、いや野心はまだまだ上を目指しています。それには多少のリスクはいとわないと思っています。
解説
富裕層のタイプ
富裕層の方は営業されることを一般的に好みません。会社が信用できるか、担当者個人も信用がおける人物かを吟味します。富裕層の方にお会いするのに確実なのは、他の富裕層の方の紹介をいただくことです。
富裕層の方は大きく2分できるかと思います。1つは、先祖代々の資産家です。全般的に保守的で安定を望みます。このタイプの方は高利率、高リスクの投資は避ける傾向があります。ただ、まだ若く、先代より実績を上げたいという意識の強い方の場合は次に述べるニューマネーに近くなります。
もう1つは、一代で財をなした起業家です。IT関係で多いですね。納得したリスクならば積極果敢に利益を求めるタイプです。そのためマスコミなどに顔を出すことを厭いません。西川はこの典型例です。すでに富裕層に達しているにもかかわらず、さらに上を目指しています。但し、もう少し年齢を重ねると、保守的になりオールドマネーに変わることもあります。








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