6. 地上の太陽
まえがき
低侵襲手術支援ロボット「ボナパルト」の製造は核融合実験炉の参画企業だった。
ストーリー

公益財団法人みやこ財団での国土防衛会議は続きます。
「次に、多国籍犯罪企業WSSPの動向ですが、医療機器分野に触手をのばしていることが判明しました。」と榊理事長は述べ、伊勢信一郎を指名します。
榊理事長と対面する特別会議室の出口側の末席で、伊勢信一郎はすっくと立ち上がりました。色白で彫りの深い端正な顔立ちで、黒髪をワックスできれいになでつけています。180センチ超のがっしりした体躯は堂々としており、スタイルを引き立たせるタイトなネイビーブルーの2つボタンスーツに濃いブルーのシャツ、ブラックのレジメンタルタイ、胸ポケットにホワイトのハンカチーフがとても華麗かつ上品です。
「ファミリーオフィス銀座代表の伊勢信一郎でございます。本年1月にドバイで中東最大の医療機器展示会アラブヘルス(Arab Health)が開催されましたが、特に注目を集めましたのが、フランス製の低侵襲手術支援ロボットでした。現在世界で最も普及しておりますのはアメリカ製低侵襲手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ(da Vinci)』ですが、このフランス製ロボットは『ダ・ヴィンチ(da Vinci)』を上回る性能があるだけでなく、医療特化型AI(人工知能)を搭載しブロックチェーンネットワークを形成し、進化する低侵襲手術支援ロボットとして注目を集めたのです。その名称は、『ボナパルト』と発表されました。」
「多国籍犯罪企業 WSSPはファンドを組み、投資家の資金を募ってこの『ボナパルト』を世界中の医療機関に普及させようとしています。その日本での販売総代理店は株式会社宅安メディカルという法人ですが、一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)と関係の濃い総合商社宅安商事の子会社なのです。一般社団法人日本名勝保護協会(JSSP)はWSSPが日本で設立した社団法人であり、琵琶湖畔に続き有馬・六甲地域の国土と水源の買収に動いておりましたのを我々が阻止したばかりです。」と述べて、伊勢信一郎は特別会議室の馬蹄形式の会議テーブルに列席する内閣官房長官以下全員を見渡しました。
「詐欺ファンドというわけではないのかね。」と、万屋理事が左手を少し挙げながらフライング発言します。恰幅が良く堂々たる大社の神主は、列席者の中で榊理事長と2人だけ羽織り袴姿をしています。
「いえ、ファンドへの投資資金詐欺を目的としているわけではなさそうです。この『ボナパルト』を製造しているフランスの医療機器メーカー「マッドテックロボット(Madtech robot)」社はそれだけの技術的能力を有しております。もともと同社は原子炉内の高放射能下という過酷な環境での作業用ロボットを製造していたメーカーであり、その製造技術を応用し開発されたものが『ボナパルト』なのです。」
「その技術的能力は、フランス プロバンス地方サン・ポール・レ・デュランス(カダラッシュ地域)での核融合実験炉ITER計画で、作業用ロボットの設計・製作に携わっていたことで証明されています。ITER計画はEU、日本、アメリカなど7か国が参加しており、世界最先端技術の核融合炉を2035年に稼働させることを目指しています。」
「マッドテックロボット社は資本の大幅な増強に成功し、3人の新役員を迎入れています。資本についてはスイスの世界的証券・投資銀行フレディ・スミスからの調達ですが、ご存知のように同行は多国籍犯罪企業WSSPのマネー・ロンダリングを担っていると言われております。新役員については、1人は中国のノージジグループのノージジクラウドコンピューティングの統括技術者、もう1人はITER計画を先導していた核物理学者、最後の1人は中国の最速スーパーコンピューター神威・太湖之昔の設計者です。そして、マッドテックロボット社は昨年突然ITER計画から脱退して『ボナパルト』開発を始めたのです。」
解説
日本国内の原子力発電所

国内全19の原子力発電所(2024年1月現在稼働中の炉12基)はすべて核分裂炉を使用しています。核分裂炉では、ウラン235の原子核に中性子を当てて核を分裂させ、同時に発生する熱で発電する仕組みになっています。原子力発電所で利用するウランの内訳は、核分裂しにくいウラン238が95パーセント以上を占め、残りの数パーセントを核分裂しやすいウラン235とすることで、ゆっくりと時間をかけた核分裂にして安全性を確保するようにしています。
商業用原子炉の型は、加圧水型炉(PWR)と沸騰水型炉(BWR)の2種類です。
問題は、発電後に発生する放射性廃棄物(高レベル、低レベルとも)の処理・処分方法ですが、地下300m以上深くに埋設処分するしかない現状です。また、危険性としては、炉心溶融して燃料が外部に流出するメルトダウンがあり、大量の放射性物質が広範囲の被害を引き起こすことです。
核融合炉

原子核を融合させてエネルギーを発生させる炉です。使われる原子は重水素と三重水素ですが、どちらも海水の中に豊富に存在します。この海水中の重水素と海水中のリチウムから作った三重水素との核融合反応(D-T反応)を炉内で起こします。
ドーナツ状の炉内を真空にし、その中にコイルを並べて電磁波の流れを作り、一億度以上の温度にした重水素と三重水素のプラズマが高速で炉内を回って核融合反応を起こすようにします。これは太陽が核融合反応でエネルギーを発生させるのと同じなので、「地上に作る小さな太陽」と言われるのです。
この反応によりヘリウムと中性子が発生しますが、核融合反応前よりも反応後の方が質量が小さくなり、軽くなった分がエネルギーになるのです。
問題は低レベル放射性廃棄物が発生することですが、地下深く埋設処分するしかないのが現状です。また危険性としては核融合反応により大量の中性子が発生する放射能対策で、炉をそれに耐えうるものにしないといけないことです。
ITER計画
「イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定」(以下、イーター協定)により、国際法上の法人格を有する国際機関であるITER機構を設立、同機構がITER計画を実施しています。
ITER計画
平和目的の核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証する為に、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです。
参加極
日本、欧州連合(EU)、ロシア、米国、韓国、中国、インドの7極です。
核融合方式
トカマク型磁気核融合方式です。ドーナツ型の真空にした炉内に磁気の流れを発生させ、プラズマを閉じ込めて核融合反応を起こさせる方式です。出力は50万kW(キロワット)です。
建設場所
国際熱核融合実験炉ITERはフランス プロバンス地方サン・ポール・レ・デュランス(カダラッシュ地域)で建設されています。
運転期間
2025年12月から20年間を予定していましたが、2024年の新たな基本計画案では初期稼働が2035年、核融合運転の開始は2035年から2039年に修正しています。






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